【エルフ娘の世にも不思議な旅】 6国目 半万年の歴史を持つ偉大な国 中篇

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公開日: 2014年9月9日火曜日 ラッキーの不思議な旅 自作小説


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エルフ娘の世にも不思議な旅 

6国目 半万年の歴史を持つ偉大な国 中篇


ラッキーは、この貧乏な国の図書館へとやってきました。
図書館そのものは、この国の建築水準に比べると豪華な作りになっていて、石作りの4階建てです。幅も広く、全長50mほどの大きさがありました。
でも、この国の印刷技術が発達してない事から、本は手書きでしか量産できず、人件費がかかって、とても貴重で高価。
そのため王族と貴族しか使用が許されない特別な図書館だったのです。
入口に兵士二人が槍を持って警備している時点で、ラッキーみたいな不審人物は、賄賂でも払わないと入る事が出来ません。
ですからラッキーは

「妖精さん。最近、光学迷彩~って叫んでみたい気分」

「……ラッキー、最近は不法侵入と不法入国と不法滞在ばっかりで犯罪のオンパレードすぎるよ……」

光を歪ませる光学迷彩を展開して姿を消し、図書館に侵入しました。
妖精さんは不満そうに呟いていましたが、いつもの事なのですぐ諦めます。
図書館の中には、無数の木製の本棚があり、全ての棚に本がギッシリと詰まっていました。
ラッキーは歴史を調べたいので、歴史の本が整理されて置かれている場所を探そうと、図書館の中を歩いてテクテクと探索。
歴史コーナーと書かれた場所を見つけたので、歴史コーナーの棚から次々と本を手にとって、ページを高速でペラペラめくって一瞬で読んで内容を理解し、また新しい本を取ってページをペラペラめくって内容を理解するを繰り返しました。
普通の人間さんには無理ですが、速読という技術です。
現実の地球でも、この技術を極めた人間さん達が居て、一瞬でページをぺらぺらめくって、内容をイメージに変換して記憶したりしています。

そして、その速読で、一つの棚にある本を全部読んでラッキーが理解した事は

「この国、歴史を捏造してるね」

本によって歴史の内容が全く食い違っていて、古い文献だとこの国は戦争に一回も勝利した事がない貧乏な国と書いてあるのに、最近の文献では全く類似点がない別の文字で、戦争に勝利した輝かしい歴史が描かれていました。
この文字が違うという所が重要です。
現在と過去で使っている文字が全く違うという事は、この国の人達は過去の文献を解読するのが困難なのです。
歴史を捏造し放題の環境が整っているという事でした。

「今の国を支配している人達が、自分達の正統性を示すために、文字そのものを変更して、歴史を最初から最後まで捏造して酷い国になったのかな。
どうなんだろう。
妖精さんはどう思う?」

「僕は人間の国の歴史なんてどうでもいいよ……」

妖精さんに聞いても完全に無駄でした。
ラッキーは、図書館にいる貴族や王族の子弟を見かけたので、彼らに聞いてみようと近付いて

「ねぇねぇ、この国の歴史で不自然に思った事はなーい?」

14歳くらいの、長い綺麗な黒髪を持つ賢そうな少年に話しかけたのです。
少年は、紅い煌びやかな龍の刺繍を施された服を着ていて、自分は偉いんだぞ!という雰囲気を醸し出していました。
図書館内にいる他の貴族の子供達よりも、遥かに金がかかった服装な事から、偉い人物の子供だと分かります。
実際に返ってきた返答も傲慢な口調でした。

「小娘、余を誰だと心得る?
この国の王子であるぞ。
すぐに頭を下げて跪け」

「うん、わかったから、私の質問に応えてくれると嬉しいな」

ラッキーの容赦ない返答を気にいったのか、王子様は残忍そうな笑みを浮かべ

「ほぅ?
余を恐れぬというのか?
見た所、金髪、長い耳、真っ白な肌、変わった白い服。
この国の人間ではないな?
何をしにこの国に来たのだ?」

「私はエルフの旅人だよ。
今日、入国したばっかりなの」

「ふん、王族と貴族しか使えない図書館に、旅人だと?
貴様は何者だ!
この国の偉大な歴史を盗みにきたのか!
皆の者!こやつを捕えよ!
余がじきじきに死ぬまで尋問してやろう!!」

その叫びとともに、王子と名乗る少年の周りに潜んでいた屈強な男達が飛び出してきました。
ラッキーを捕まえようと、一番先頭に居た男が、ラッキーの手を掴もうとすると

バシュンッ

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!
手があああああああああああああああ!!!
俺の手があああああああああああああああああああああああ!!!」

ラッキーの高速回転している風のバリアーに触れてしまって、両腕が綺麗さっぱり切断され、切断された両腕がバリアーに潰されてミンチになり、図書館中に血をばら撒いてしまったのです。
図書館中に居た人間さん達が、血を浴びて騒いで逃げ惑い、屈強な男達と王子様は何が起こったのか分からない顔で茫然としていました。
図書館が血だらけで生臭く、腕を切断された男は出血多量で倒れて死んでいます。
ラッキーはこの事態に全く動揺せずに、王子様の所までトコトコ歩き

「うーん、話を聞ける環境じゃなくなったね。
君を誘拐して、何処かで話を聞けばいいかな?
ちょっと痛いと思うけどごめんね」

「余を誰だと思・・・ヒデブッ!」

王子様の周りごと光を歪めて光学迷彩で姿を隠し、腹にパンチ叩きこんで気絶させ、王子様とラッキーの両方の身体を魔法で飛ばし、一瞬で図書館の外へと逃げました。
場に残されたのは、同僚の血でまみれた屈強な兵士さん達。
王子様の姿が消えたので、周りを必死に探しますが何処にも姿がありません。
このままだと、王子様が失踪した責任を取らされて、家族ごと処刑ENDです。
困りましたね。
人間の世界は仕事に失敗すると、重い責任とやらが発生するのです。
基本的に報酬が良ければ良いほど、失敗した時の責任は重くなる仕様になっているそうです。






ラッキーが誘拐した王子様を運んだ先は、国の外にある禿山の一つでした。
木が伐採されすぎて、元々あった土壌が雨に流され、岩山と化してしまった悲惨な場所です。
王子様の身体を大きな岩の上に仰向けに置き、起こすためにペチンペチンと顔をビンタしました。
ラッキー、一国の王子様相手といえど容赦ありません。
知的好奇心を満たすためならば、何をして良かろうなのだぁーなのです。

「ラッキー。
人間の世界のいかれた常識に染まっちゃ駄目だと思うの……」

妖精さんが忠告しましたが、ラッキーは無視し、王子様の顔を叩いて無理やり起こしました。
王子様はラッキーの顔を見て驚いて、恐怖で震えています。
今までの出来事で
【こいつは人の形をした・・・化物だ!】という事がばれているからです。
ラッキーは恐怖で震えている王子様に、可愛らしい笑顔で

「ねぇねぇ、この国の歴史で不自然に思った事ってなーい?」

「よ、余は化物に屈せぬぞ!
5000年の歴史を持った国の偉大な王子として、死ぬ最後の瞬間まで、祖国の歴史は本物だと言ってやろう!
そして!化物を謝罪させて、余の配下にしてやる!」

ラッキーは、王子様の無謀ともいえる勇気に感心しました。
ちょっと意地悪をしたい気分になったので、問いかけの内容を変えて

「じゃ、その偉大な歴史を話してみてよ。
そしたら、お家に返してあげるよ。
ね?簡単でしょ?」

「……よしわかった。
余の国の偉大な歴史にひれ伏すがいい!」

こうして、5000年の長きに渡る昔話が始まりました。
具体的な内容は以下の通りです。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔々~、今から5000年ほど前。
私達のご先祖様は、世界で初めて農耕をして、更に鉄器を作り上げ、世界で唯一といってもいい高度な文明を持っていました。
でも、優しかったので、周りの野蛮な国々に技術を無償でプレゼントしたのです。
世界で初めて剣、槍、弓を作っても、優しいのでプレゼントしました。
船を作ったり、家を作る技術も、優しいのでプレゼントしました。
蒸気機関や鉄道、飛行機を世界で初めて開発しても、優しいので無償で技術提供しました。
ありとあらゆる便利な技術を、周りの国々に分け与えたのです。

ですが、周りの国々は最低最悪の悪鬼のような奴らでした。
ご先祖様がプレゼントした技術を使って軍備を整え、この5000年の間に1万回も攻め込み、私達から富・技術・人・文化を奪っていったのです。
私達が今、貧乏なのは、恩知らずの周辺国が全部悪いのです。
今では遠い国々すら、我が国の偉大な歴史を盗み捏造してしまう有様なのです。
この恨みを決して忘れないように、本にして歴史を記録しましょう。
他国の捏造された歴史に描かれた偉人は、元々は私達の国が輩出した偉人なのです。
ありとあらゆる技術は、私達が作ったのに、彼らは歴史を捏造して自分の物だと言い張っているだけなのです。
この理不尽な事をされた恨みを決して忘れてはいけません。
そして、謝罪と賠償を求め続け、何時の日か、ご先祖様の恨みを果たしましょう。
彼らの持っている物は、全て私達が持っているはずの物なのです。

おしまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラッキーは、上記の内容を聞いてクスクス笑いました。
王子様は笑われたので怒っています。

「何が可笑しい!
余の国の偉大な歴史だぞ!
古代の五大文明の一つにも数えられ、ありとあらゆる文化の発祥の地となった祖国を馬鹿にするなら許さぬ!」

「だって可笑しいんだもん。
そんな馬鹿な事を、本当の事だって信じ込むなんて……クスクスクス」

「何処がどう可笑しいのだ!
余に説明してみせよ!」

ラッキーは腹を抱えて死にそうになるくらいにしばらく笑った後に

「じゃ、楽しませてくれたお礼に、私の記憶を、魔法を使って見せてあげるね。
人間に対して使うの初めてだけど、死んだらごめん。
その時はお墓くらいは作ってあげるよ」

「や、やめ」

王子様の頭を両手で掴み、魔法をかけたのです。
その魔法は、脳味噌や魂が記憶している内容を、他者に見せる魔法。
ラッキーのそれなりに長すぎる人生経験や歴史知識の一部が、これから王子様の頭に流れ込むという事なのです。
王子様はどうなってしまうのでしょう?

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




後篇へ続く




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9 件のコメント :

  1. (´・ω・`)この小説って思いっきり現在の中・露・米等をディスっててとってもゆっくりできるね!!(マジキチスマイル)

    (´・ω・`)一つの思想や理想が極まるとそれが善意から生まれたモノでも結局悪意溢れるモノと大差無いと言ういい教訓になる小説さんだね!!

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    1. (´・ω・`)ディスっている気は特にないのですよ。

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  2. やめるんだ!王子が北の将軍様のように憤死してしまう!

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    1. (´・ω・`)面白ければよかろうなのだぁー

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  3. この世界の歴史には詳しくないんで、貧乏国の資料だけを基に判断してみる。

    >この5000年の間に1万回も攻め込み
    平均年二回ペースで攻め込まれているのに、技術渡しまくっているの?
    蒸気機関とか発展させられる余裕はあって、しかも何度も攻め込まれた経験があるのに、軍備整えてなかったの?
    たとえ技術力が本当にすごかったとしても、政治が池沼としか思えないw

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    1. (´・ω・`)この架空の国が言うことは、全部捏造じゃから、真剣に考えるだけ無駄なんじゃよ。

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  4. 水車が創れなかった架空の国

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    1. (´・ω・`)この架空の国の裏設定を見通すとは、お主は中々やるな。

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    2. パルメさんの粛清が決まりました

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