3国目 神話を伝える国なのです 後編

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公開日: 2014年12月16日火曜日 自作小説 正しいオートレベルアップの使い方






前にゆっくり戻るよ ゆっくり次に進むよ
HP  どうやら旅歩きでエルフ娘の人生が凄くレベルアップしたようです  

今は光龍王への恨み辛みじゃなくて、数百人の人間達による一斉攻撃に対処する方が先決でした。
膨大な数の銃弾が圧倒的な速度で私とイエニーさんのところにやってきますが、全て分厚い水の盾で勢いを削がれて床にポロポロ落ちているので問題なし。
しかし問題なのは火の精霊魔法。
炎が一直線に火炎放射器のように何十本も伸びて絶える事もなく、私達の方向へと延々と向かってくるんです。
イエニーさんが水を空中から集めても集めても、片っ端から炎で高熱で蒸発させられてイエニーさんは防御で精一杯。
だって、イエニーさん。
私を守るために、水を広く周りに360度展開しすぎて攻撃に回す余裕がないんです。
少しでも防御を怠ると、隙間からやってきた銃弾や迂回してきた炎を浴びて、私が死んじゃいますしね。

「あの、ヴィクトリアさん?
手伝ってくれませんか?
それとも防御やめてもいいですの?」

あ、戦いをイエニーさんだけに任せるのは駄目でした。あはははは!
水の精霊魔法ってこういう水場が全くない場所だと、空気中からしか水を集めれないから効力が低いんでしたっけ?
私が頑張らないといけないですよね。
行きますよ!光の精霊さん!輝かしい未来のために!

「精霊さん!人間達を殺さない程度にビーム!」

ピカァー!
そうお願いすると、光の精霊さん達は大聖堂に、失明するかもしれないレベルで光を大発生。
屋内は光に包まれ、真っ白。
魔法版の閃光弾(フラッシュバン・スタングレネード)なのです。
その圧倒的な光量に目を焼かれた数百人の人間達は、両手で目の周りを抑えながら、床に転がりました。
恐らく失明してますね。これ。

「「「ぎゃああああああああああああああ!!!!
目がああああ!!!!目がああああああああああああ!!!!」」」

なるほど殺さない程度の攻撃で相手を無力化しようとすると、こうなるのですか。
イエニーさんは、盾にしていた水のおかげで光が適度に反射されて大丈夫そうです。
私?
光の精霊さんに愛されているから、光を直視してもノーダメージです。
最近、太陽を直視できるようになったから素晴らしいなぁと思いました。
あとの問題は、倒れ伏した人間達の中で、唯一立っている大司祭……いや、本物を殺して成り代わった魔族が、笑みを浮かべて立っている事です。
ラスボスの風格を身にまとう怖い顔の魔族。
この時点で、魔族の大幹部とか、魔王とか、そんな気がしてくるのです。
光龍王が言うには私1人では絶対勝てない相手っ……!
私が緊張しながら睨んでいると、魔族は口を開いて

「ふはははははは!
さすがに人間どもは役に立たなかったようだな!
だが我は闇の魔王ザ・デヴィルの配下300万人衆の一人!偽りの偽僧侶の異名を持……こら!会話中に攻撃はやめろ!」

「えい!」

「アバブツ!」

イエニーさんの可愛い声とともに容赦なく魔族の体を橙赤色の液体が包み囲んで、青い光とともに消滅させちゃいました。
ただの雑魚だったのです。
300万人衆の1人とか、何か言ってましたけど、魔族ってそんなにいるんですか。
私の幸せな結婚生活は遠いんですね……
ん?イエニーさん、こちらに顔を向けてどうしたのですか?

「ヴィクトリアさん。
油断しては駄目ですわ。
どうやらあちこちに魔族がいるみたいですの」

「はいっ?」

「ほら、後ろを見てください」

そう言われて後ろを振り返ると、そこには4本の腕で筋肉もりもりの大きな化物達が次々と大聖堂の入口から入ってきて、魔力で作り上げた弾丸を数百個同時に射出してくる場面でした。
私は咄嗟の出来事に

「精霊さんバリアー!」

周囲に光の力を用いた半円型のバリアーを精霊さん達にお願いして、水の盾の前に展開してもらい、魔力弾を全て受け止めて消滅させました。
精霊さんさすがです。
昼間だと、光の精霊さん達強いのです!
でも、私、新米精霊魔法使いだから制御が下手なんで、攻撃はイエニーさんがやってくれませんかね?
防御と攻撃の両方はさすがに難しそうです。
そう思っていると、次々と魔族達は先ほどの橙赤色の液体に包まれて、青い光とともに流れ作業のように消滅。
液体は建物の外へと広がり、私の視界の外にいる魔族も、容赦なく包み込んで消滅させているようです。
私はあの液体がどんな代物なのかな?と気になったので、隣で微笑んでいるイエニーさんに

「あの、イエニーさん」

「なんでしょうか?ヴィクトリアさん」

「先ほどの魔族を倒した液体は何なのですか?」

イエニーさんは外見年齢に相応しい無邪気な笑顔で

「硝酸と塩酸を1:3で混合して作った王水に浄化の力を籠めた代物ですわ♪
くれぐれも触るのはやめてくださいね?
王水はゴールドでも溶かす液体ですから」

「……わ、わかったのです」

イエニーさんは優しいですけど、敵に回したら怖そうなロリババアです。
良い関係を築けるように努力した方がいいですね。私と同じロリババアだから長い関係になるでしょうし。
とりあえず、暇になったから小さい声で気づかれないように散歩チート使って、イエニーさんと定期的に出会えるように運命に干渉しますよ!
それに、この散歩チートっていう能力、相手が近くにいる方が効力高い気がしますし。

「散歩チート、三つ目の願いは、イエニーさんと定期的に出会える運命が欲しいのです」

【テレレテッテッテー♪散歩ポイントを消費してヴィクトリアは願いを叶えた!
それは他者の運命に干渉する願いだ!
イエニーが無意識に、ヴィクトリアが居る方向へと向かって移動するようになった!】

ふぅ、イエニーさんには悪いけど、魔族関連のイベントに積極的に巻き込ませる未来を作ってごめんなさいなのです。
あと、光の精霊さん、いつも力を貸してくれてありがとうございます。
あなた達がいないと、私の人生は終了でした。
無償でここまで協力してくれる友人なんて、そう滅多にいませんよ。
きっとエルフの繁殖力が低いのは精霊さんという友達がいるせいに違いないです。
結婚する必要がないくらいに、生活の面で便利すぎるんです。








私とイエニーさんが大聖堂からゆっくり外に出ると、あちこち人間の死体だらけでした。
闊歩するのは、先ほどの筋肉もりもりの魔族達。
どうやら1匹ごとに数十個の魔力弾を精製するしか芸がない雑魚魔族なのです。
防御はイエニーさんが水の液体を展開して魔力弾を防ぎながら、王水の液体で魔族を攻撃して倒していますから、私は攻撃に専念すべきだとすぐに理解しました。
格好よく活躍しますよ!
これからはずっとわたしのターン!

「精霊さん!魔族にビーム!」

光の精霊さん達が作った複数の高エネルギーのビームが射出されて、10匹以上の魔族の体を貫通、ビームはほとんど減衰する事なく、教皇庁、美術館、墓地、博物館、各種宗教施設や芸術品や骨董品を貫通し、この国の分厚い外壁に直撃。
外壁は真っ赤に膨れ上がって溶けて大爆発!

ドドドドドカーン!

……壁に穴が空いちゃいました。貴重な歴史遺産すぎる建造物まで壊したから賠償金が凄い事になりますよ、これ。
いやはや、ビームは攻撃力過多すぎます。
もう少し手加減して使えないと、使い辛いのです。
えと、どうお願いしたら、精霊さんは手加減してくれますかね?
やっぱり弱めのビームと言ったら、あれですかね?
拡散と言えばいいんですかね?

「精霊さん!魔族に拡散ビーム!」

精霊さん達は数千の弱いビームを射出して、視界いっぱいにいる魔族全てに向けて攻撃。
さすがに弱いビームなので、着弾しても貫通する事はなく、魔族の体を焼いて大ダメージを与えるだけです。
今の攻撃だけで、見える範囲にいた雑魚魔族の半分以上は死に絶え、残った半分はイエニーさんの王水に包まれて消滅。
あー、これは仮に生存者が居ても、絶望的ですねー。
今の拡散ビーム、銃を適当に乱射するも同然の行為ですから、そこらへんに死体のように転がっている人間達も焼いちゃいましたよ。
今日、この日にこの国にいるなんて、なんて不幸な人たちなんでしょう。
冥福を祈るのです。
恨むなら魔族を恨んで欲しいですよ。ほんと。

ドカーン!

あ、師匠達がいる方向にある教皇庁という観光名所が大爆発して、中から紅い豪華な法衣を着たお爺さん1人と、師匠が出てきました。
師匠は、13歳くらいの金髪のボーイッシュな美少女エルフをお姫様抱っこしていて……はい?
なんですか!?それは?!
師匠が知らない美少女に攻略されてしまった?!
私、まだお姫様抱っこしてもらった事がないのに、こんなのあんまりです!
他人の男を寝とるなんて、なんて酷い女なんでしょう!と思って私が怒っていると、隣にいるイエニーさんが穏やかな笑顔を浮かべて

「あらあら、あそこにいるのはマクシムお兄様じゃないですか」

「え?イエニーさん、今なんと?」

「あそこにいるのは私の夫マリウスのお兄様ですわ。
夫はあそこでお兄様にお姫様抱っこされている金髪の少年ですの」

え?あのボーイッシュな金髪美少女が男?
よく見てみるのです。
光の精霊さんのおかげで視力が良くなったから、ここからでも体の細部が分かります。
えーと、着ている衣服は紅いジャージに紅いズボン、女の子としてはファッションセンスは壊滅的で地味な服装。
胸は……胸は……完全に平らです。これは100%男ですね。
ふぅ、良かったのです。
凶悪な恋仇じゃなくて良かった。
あれ?私が師匠と結婚すると、イエニーさんは私の義理の妹という事になるんですかね?
いやー、照れますねー。
親切なイエニーさんと親戚関係になれる時点で、きっとリア充という奴に違いないです。
この世界は物騒ですけど、良い人に出会えるのって人生最大の財産だと思うんですよね。
今は師匠と弟さんの戦いを見守る事にしましょう。
たぶん、援護射撃したら間違って師匠に当ててしまうでしょうし。
二人は、逃げている法王……いや、本物を殺して成り代わった魔族を追いかけて、風と炎の精霊魔法を合体させた山でも溶かせそうな超強力なピンク色の火炎放射で魔族を瞬殺。
こう言ってはなんですが、魔族弱すぎなのです。いや師匠達が強すぎるんですかね?
なんか死に際に「闇の魔王ザ・デヴィル配下 幹部三万人衆の1人」とか叫んでいる間に、師匠達に容赦なくツッコミを入れられて死んでますよ。
あんたらはお笑い芸人か何かなのですか?
きっと、そういう肩書きを持たないと、自分は大した魔族じゃないんだなと自覚しちゃうから、名乗っている気がしている、今日この頃でした。
大司祭の格好をしている魔族も、なんか偽りの偽僧侶とか言ってましたし、皆、異名持ってるんですかね?
魔族はひょっとしたら全員が異名持ちの中二病患者なのかもしれません。
あ、今、師匠が空中から数千に及ぶ風の刃を同時射出して、あちらこちらにいた雑魚魔族を殲滅していました。
風の刃の数から考えて、雑魚魔族って1000匹も居たんですか……。
それを瞬殺できる時点で、精霊魔法が世界最強と言われる理由がわかる気がするのです。





偽法王を倒した師匠達は、私達の方へと飛んできました。
お姫様抱っこされている弟さんは顔が真っ赤。
凄く恥ずかしそうです。
そりゃ男同士でお姫様抱っこされても嬉しくないですよね。
師匠が地上に降りると、弟さんは逃げるように師匠から離れて、イエニーさんの所まで走って抱きついて

「イエニー!大丈夫だったか!?」

「あらあら、マリウスったらいつも情熱的ですわね。
この程度の魔族が相手じゃ、危険なんてある訳ないですわ」

そういえば、夫婦でしたね。この二人。
外見年齢が私と同じ13歳くらいですから、ついつい忘れそうになります。
いやー、いいですねぇー。
私も師匠と結婚してラブラブのリア充になりたいものです。
肝心の師匠の方は、建物がところどころ壊れたこの国を見て、暗い顔をしてます。
こういう時こそ、普段はお荷物な私が役に立つべきだと理解したので、会話して元気づけようと思いました。

「師匠、無事で良かったのです」

「……ああ、ヴィクトリア。
君こそ無事なようでなによりだよ。
人間に擬態した魔族の気配を僕が知らなかったせいで、どうやら危険な目に合わせてしまったようだね?
大丈夫だったかい?」

「はい、イエニーさんが私を守ってくれたので大丈夫だったのです。
ところで師匠、魔族って少なくとも百匹以上居ましたよね?
風の精霊さん達は、化物みたいな姿をした魔族を探知できなかったんですか?」

「100匹以上……最下級魔族の事か。
最下級魔族はね。
上位の魔族が細かく分裂して、小動物の魂に寄生して作る即席の魔族だから、僕達がこの国に来た時は最下級魔族は居なかったんだよ。
最下級魔族が大量発生したのは、僕がさっきの偽法王と面会して、偽物だと見破って戦闘になったから、魔族側が手駒を増やそうとしたんだ」

「なるほど、そういう事なのですか」

「それよりも、今回の事件は人類側には痛恨のはずだよ。ヴィクトリア。
一応、このアーリア教の総本山は世界一長く続いた機関として、周辺の国から信用されていたんだけど、今じゃご覧の有様さ」

そういって、師匠が私に周りを見るように手振りで伝えてくれました。
周りは、死体だらけ。
人間も魔族も死んでいます。
何人かは生き残っているようですけど、再建難しそうですねぇ。
確か人口800人くらいの国でしたっけ?
先ほどの戦いで、ロウワーデーモンに殺されて死んだ人の数は300人くらい居そうだから、復興は時間がかかる気がします。

「まぁ、人材の方は周辺の国の支部から来るだろうから、時間をかければ大丈夫だろうけど、ヴィクトリア。
綺麗に重要な歴史遺産を幾つもぶち抜いて、外壁を壊したね?
風の精霊達で確認したら、伝説の天才芸術家テファエロが16年かけて描いた作品の大半が壊れていたよ。
これはきっとラッキー金貨10万枚相当の被害が出ているね」

「……あはははははは。
全部、魔族がやったという事にして欲しいのです」

いやー、笑うしかないです。
私の出したビームで、文化遺産が壊れまくったなんて、考えたくもないです。
笑って誤魔化していると、師匠が右手を私の頭の上に置いて撫で撫でしてきました。

「ま、僕はそんな骨董品が壊れた事よりも、君が無事だった事を祝うけどね。
形ある物は何時か壊れるのさ」

相変わらず子供扱いされてますけど、何時か、師匠のお嫁さんになれるといいなーと思います。
あと、イエニーさんがこの光景を見て静かに微笑んでいました。
私の好きな人が師匠ってばれちゃいましたかね?
隣にいるマリウスさんも私を見て

「……なぁ、兄貴。
その娘はひょっとして奥さんか?」

その問いに師匠は顔を横に振って

「やれやれ、マリウス、男と女が一緒にいる = 恋人や夫婦と考えるのは短絡的だよ。
彼女の名前はヴィクトリア。
僕の弟子さ」

「なんだ、兄貴は未だに結婚してないのか。
独身生活が900年になる前に結婚しないと、いいお嫁さんは見つからないぞ?
ラッキーお婆さんと結婚したフィルお爺さんみたいになっちまうぞ」

「どうにも僕は弟と違って良い女性との出会いがなくてね。
気に入った娘が居たら結婚するさ」

何時か、この可愛い弟さんに私の事を「お姉さん」と言わせてみたいと思う結婚志望のロリババアがここにいるのですが、師匠は手を出さないんですかね?
ん?
 独 身 生  活 9 0 0 年 に な り そ う ?
師匠の実年齢って一体……私、前世を合計しても半世紀も生きてませんよ?
あ、師匠と弟さんが仲良く会話している間に、イエニーさんが私に近寄ってきて耳元で

「ヴィクトリアさん。
あなたの好きな人はマクシムお兄様ですわね?」

私以外に聞こえないような声で囁かれちゃいました。
でも、師匠は風の精霊魔法使いですから、この小さな声でも聞こえていると思うんですよね。
その問いを肯定するために、私がゆっくり頷くと、イエニーさんは微笑んで

「あらあら、マクシムお兄様にも春が来たという事かしら?
私は二人の恋愛を応援しますわ。
結婚式には絶対招待してくださいね?」

「わかったのです。
イエニーさんが幸せな新婚生活ができる事を、私も応援しているのですよ」
(散歩チートで、魔族関連のイベントに巻き込んでごめんなさい)

「ヴィクトリアさんがどんなヴェディングドレスを着るのか、今から楽しみですわ」

師匠が今の会話を聞いていたのか、頭を右手で掻きながら「やれやれ」という感じに面倒そうにしてました。
この国は、魔族だらけで良い思い出なしで終わりましたけど、イエニーさんと出会えて友人になれた。
それだけで私は幸せ者です。
……あとは、まぁ、私の魔法で失明させた人間達を大聖堂に放置したままだから、怪我を治さないといけないんですよね。
光の精霊さん、失明って治せますか?
え?出来る?
あんた達、どれだけ万能なんですか!





三国目 神話を伝える国  おしまい

テーマ【なろうテンプレ 俺TUEEEEEEE・無双】
http://suliruku.futene.net/uratop_2ch/2zi_zyanru/Syousetuka_ni_narou_Tenpure.html

壊れた歴史遺産【バチカンの観光名所ランキングの上位陣と、中にどんな作品が置かれているのか説明を見ながら書いた】


そして現実でも光属性が最強だったと思ったら、迎撃用のシステムだった事に後から気づかされた。
アメリカのレーザー砲、射程長いは一発あたりのコスト安いわ(1ドル未満)と優良兵器しゅぎる・・・。
http://suliruku.blogspot.jp/2014/12/1_15.html  

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