【可愛いロリババアはお嫌いですか？】　 1話　　ぼくがかんがえた、さいきょうの、アメリカだいとうりょう

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公開日： 2014年11月26日水曜日 可愛いロリババアはお嫌いですか？ 自作小説

 1話　　ぼくがかんがえた、さいきょうの、アメリカだいとうりょう





かつて、世界を救った伝説のヒーローがいた。
弱気を助け、悪を挫き、美女を抱き、世界中の人間達に愛と希望と勇気がある事を知らしめてくれた。
その名をアメリカ大統領【ビックボス】。
彼は、地球滅亡を賭けた最後の戦いで死に、今、彼が愛したニューヨーク市民達が見守る中、国葬されようとしている。
白い棺桶の周りに、市民達が捧げた億にも上る膨大な数の花々。
棺桶で永遠の眠りにつくのは、身長3mの筋肉隆々の若き白人の青年にして、皆のヒーロー【ビックボス】。
その死に顔はとても安らか。
最後まで悪に屈せず戦い、希望を抱いて戦った事を、市民達はその顔を見るだけで知る事ができた。
白い棺桶は、車に載せてニューヨークを一回りしてから、墓へと埋葬される予定……だったが、空から一つの光とともに冴えない顔をしたお爺さんが降りてくる。
お爺さんは後ろから神々しい後光を放つ怪しいジジイ……いや、神様らしき何か。
ニューヨーク市民は、お爺さんの顔を見るだけで、キリスト教の唯一神ヤハウェだと理解し、神が降臨する奇跡にざわめいている。
神は、死んだビックボスの棺桶のすぐ側へと降り、こう語った。

【ビックボスよ！
ここで死ぬとは情けない！】

ニューヨーク市民達は、なぜか、日本のRPGのテンプレのようなこの言葉にひれ伏してジャパニーズ土下座。
アメリカ人なのに、なぜか頭を道路に押し付けて誠意たっぷり。
冴えないお爺さん……もとい、神様は神々しい光とともに、右手を振り上げて

【しかしビックボス！
お主を必要とする世界がある！
お主は死ぬには早すぎた！】

この言葉とともに、神様とビックボスの棺桶は空高く上がった。
ニューヨーク市民と、これを中継で見ている地球中の１００億人の人間が驚く中、神様の言葉が周りに響く。

【滅亡に瀕している異世界がお主を必要としている！
故に！お主に二度目のチャンスをやろう！
そして、そこで幸せになれ！】

この言葉を聞いた全世界の人々が感動して涙を流した。
ああ、皆のビックボスが異世界で大活躍するんだなと思うだけで、希望が心に湧いてくるようだった。
英雄が死んだと思うよりも、どこかで生きて活躍しているんだなと思える方が、前向きに生きれる気がする。
そんな皆が見守る中、ビックボスを載せた棺桶と神様はグングン空高く上がり、雲の彼方へと消えようとしている。
ニューヨーク市民達は口々に、ビックボスに最後の言葉を伝えようと必死に叫んだ。

「ビックボスっー！あんたのおかげで俺は不治の病が治って、日本の甲子園で野球ができたんだ！」
「「「「「「今までありがとうっー！」」」」」
「「「「「あんたこそ最高の英雄だぁー！」」」」」　
「「「「「偽大統領との戦いの時、悪い事をしてすまなかった！」」」」」
「「「「「幸せになれる壺を売ってくれたおかげで、私の人生バラ色よぉー！」」」」」」
「「「「「私に子供を授けてくれてありがとうー！立派にあんたの子供を育てるわ！」」」」」

こうして、ビックボスはアメリカ、いや、地球最高の伝説の男となった。
地球の人々は、苦しい時、死にたくなった時、何時も、ビックボスの不敵で愉快な顔を思い出す。
彼は常に笑みを浮かべて、困難に立ち向かう不屈の勇士だったと。
きっと、異世界で活躍して、悪い奴らをバタバタなぎ払い、美女でハーレムやって子供を3桁単位で作って内政チートしてネオ・アメリカ合衆国を建設して、夢と希望と愛を周りにばら蒔いていると、素直に信じる事が出来た。














……ビックボスは、青い大気が美しい遥か上空で目を覚ました。
そこは普通の人間なら、寒さ以前の問題に、空気が薄すぎて死んでしまう高度だったが、人外レベルまで鍛え上げた身体は劣悪な環境に余裕で耐え、マントの不思議な力で空中に浮かんでいる。
彼の目の前には、冴えない顔をしたお爺さんがいて、偉そうにこう言った。

【ビックボスよ、目が覚めたか？
ならば行け！
異世界を救ってこい！
それがお主の次の使命だ！】

ビックボスは何事かと思った。
アメリカ大統領である自分に向かって、これほどまでに上から目線で命令できる存在がいるのかと。
そもそも、偽アメリカ大統領との最終決戦の末に、自分は死んだはずなのに、なぜ生きているんだと！とツッコミたい気分になっている。
まずは体をチェック。
全身をしっかり覆う青いスーツ、紅いマント、3mのマッチョボディ。
幽霊とは思えない生々しい身体だった。

「……私は、生きているのか？
あの偽大統領のスーパーダイナマイトアトミックハリケーンクラッシャーZを食らって、死んだはずなのに生きている？
確か両足が吹き飛んだような……まぁいいか」

気にしない事にした。
うじうじ考えるよりも行動してから後悔する生き方をしてきた男。
ビックボスは顔に不敵な笑みを浮かべて、目の前にいるお爺さんに話を聞くことを優先する。

「おい！
そこのお爺さん！
ここはどこだっ！？
ちなみに私はアメリカ大統領だ！
言われなくてもテレビを見てたら知ってるよな？」

【そんな事は言われずとも知っている！
お主には、異世界を救って欲しいのだ！
その異世界には、封印されている魔王がたくさんいて、いずれ復活する時がやってくる！】

「ん？異世界？
頭、大丈夫か？」

ビックボスは、このお爺さんが脳みそがやられている可哀想な人なのかと思った。
彼本人が非常識の塊なのに、お爺さんの言うことを全く信じていない。
だから、胸元から衛星電話を取り出して素早くスイッチをポンポン押し、病院に電話した。

「病院かっ？
こちらはアメリカ大統領ビックボスだ！
至急、病院に搬送して欲しいお爺さんがいる！
治療費は私が持とう！」

【やめんか！
ワシは正気だ！】

「安心しろ！お爺さん！
病院は怖くない！
治療費は私が払う！」

ビックボスはナイスな笑みを浮かべて、お爺さんを安心させようとしたが、それが神様の逆鱗に触れ、神様が右腕をそっとあげると

【とにかく異世界にいけ！】

ビックボスの周りの空間が、青色から緑色に変わり、地球とは全く別の惑星へと移動していた。
空には二つの月が見える。
地球の月は一つのはずなのに、二つも見えた事でビックボスは驚いた。
先ほどのお爺さんの姿は、どこかに消えて見えない。

「月が二つっ！？
一体、何が起きたんだ！？
まさか、どこかの悪の秘密結社が月を二つに割ってしまったのかっ！？
だとしたら月の破片で地球が危ない！
地球の平和は私が守る！
なぜなら私はアメリカ大統領だからだ！」

こうして、ビックボスの新しい冒険が始まったそうな。
自分の事をアメリカ大統領、アメリカ大統領と騒いでいるが、死んだ事で任期が解かれて、今は立派な無職でございます。






テンプレ①【神様の力で異世界トリップ】