【無職エルフ 】 (3国外目) 旅のマニュアル(エルフ仕様) 前篇

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公開日: 2014年8月27日水曜日 自作小説 無職エルフ ~暇だから旅をする~



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無職エルフ
(3国外目) 旅のマニュアル(エルフ仕様) 前篇 

私は、人間の若い男と一緒に旅をした事がある。
とっても新鮮な体験だったから、今でもたまに振り返って思い出す。
短い間の付き合いでも、何度も人間は面白いなと思わせてくれた。
だから、また思い出そう。
あの懐かしい。
・・・・・名前なんだっけ。
人間は、人間としか認識してないから、覚えてない。

「少しは人の名前を覚えようよ!?」

妖精さんは、私の心の声にもツッコミを入れてくれて素敵。





今から数年前。
周りに森しかない小さな道を歩いていると、私は14歳くらいの若い人間の少年と出会った。
少年は旅という奴に多少は慣れている雰囲気のようで、持ち物は拳銃と、錆びたバイクの乗り物と、多少の荷物だけ。
服装は汚れても目立たない茶色のジャケット、頭にゴーグルを被っていた。
その少年は、私みたいな貧相な小娘の外見に発情したのか、積極的に話しかけてくる。

「よぉ!お譲さん!
若い者同士、俺と一緒に旅をしようぜ!
俺の名前は○○○○!
よろしくな!」

私の後ろを付いてきた。
この時、名前らしき単語を言ったような気がするが、私は覚えてない。
無視して、テクテクと徒歩で道を1時間。
その間、バイクに乗った少年は、私に何度も話しかけてきた。
退屈を紛らわすのに丁度良かった私は、少年の問答に素直に答えた。

「なぁ!
可愛いお譲さんの名前は何だ!」

「ラッキー」

「運が良さそうな名前だな。
年齢は?」

「100歳から面倒で数えてない。」

「わかった!10歳くらいだな!
年齢を偽るのが下手だぜ!
でもそこがいい!」

人間は私の話を聞いてないのだろうか。
勝手に10歳扱いされている。
少年は楽しいのか、バイクに乗ったまま笑顔を私に向けて、質問を続けてくる。

「お譲さんは1人で旅をしているのか?
歩くのに疲れたら、俺のバイクの後ろに乗ってもいいんだぜ?」

「私は二人で旅をしている。
歩くのが好きだから、バイクには乗らない。」

「え?
二人?
もう1人は何処にいるんだ?」

少年が周りを見渡した。
でも、人間には妖精さんの姿は見えない。
今も、私の頭の上に乗って、ポカポカと、私の頭を叩いている妖精さんの可愛らしい姿は目に映ってないのだろう。

「ラッキー!
人間の男は、発情した猿だよ!
ここから空を飛んで離れようよ!」

いや、この人間は見ていて楽しい。
どうせ、短い付き合いだ。
しばらくは、こうしているのも悪くはない。
少年は周りを見渡し、誰も居ない事を確認して、勝手に納得したのか、意外な事を言ってくる。

「お譲さん。
あんた、迷子なのか?
10歳児が一人旅なんか出来ないだろ。」

「ああ、確かに10歳児だと、エルフでも旅は難しいな。」

「そうだろ、そうだろ。
よし、俺がお譲さんと一緒に旅をしてやる!」

ふむ。
この少年は、本当に発情しているのかもしれない。
人間は万年発情しているから、周りの生態系を破壊するくらいに繁殖力が激しいと聞く。
見ず知らずの私と一緒に旅をしたい時点で、合体したいんだな。
妖精さんはどう思う?

「よく考えたら、ラッキーに手を出すの不可能だから、一緒に旅をしてもいいって思ったの。」

そうか。
人間の少年と旅か。
楽しい事になりそう。
クスクスクス

「おお?
お譲さん、笑ってどうしたんだ?
俺と旅が出来てうれしいのか?」

「ああ、人間は楽しいよ。」










ひたすら道を歩いていると、空が真っ黒の夜になった。
いつもの私なら、睡眠を取らずに、何日も歩くところだが、少年がテントの設営をしていて興味深かったから、足を止め、少年の行動を見守る事にした。
少年は、茶色の組み立て式のテントの端を、スムーズに地面に杭を打ち込んで場に固定し、3分くらいで私と少年が一緒に入れそうなサイズのテントが出来上がる。
少年は私の方に振り返って笑顔で

「どうだ!お譲さん!
これが俺のテントだ!
風にも強く、持ち運びに便利!
俺の国の最新式のテントなんだぜ!
今日はこの中で眠ろうな!」

やはり人間は見ていて面白い。
人間は、狭いテントの中で眠って、旅をして暮らしているんだな。
そのためにテントを組み立て式にして、嵩張らないように工夫してある。
そういう所に人間の知恵と技術を感じて楽しい。
クスクスクス。
お礼に、私の旅の暮らし方も見せてあげよう。

「人間。
私は、狭いテントの中では眠らない。」

「おいおい。
野宿の時に、テントで眠らないと、雨風で風邪を引いて死ぬぞ!?
いいからテントの中で休憩しろよ!
俺も初めてだけど、やさしくするからさ!」

「いや。私が寝る場所は・・・・ここだ。」

私は指をパッチンと鳴らす。
それで召喚魔法を発動させて、遠くにある別荘をここまで転送して持ってくる。
その別荘は、台風と地震に強い構造にするために平屋建てのノッペリとした背が低い豪邸で、風呂、トイレ、ペット、食料庫つきの優れものだ。
どれもこれも、私が生きるために必要のない機能ばっかりだが、楽しさを追求したらこうなった。
少年は、私が家を召喚した事に驚いて口をポカーンと開けて、しばらく茫然とした後に

「な、なんだこりゃぁー!
お嬢さんは何者なんだぁー!」

「普通の旅人だ。」

「家を持ってくるとか、普通じゃないだろー!
普通の旅人は、テント暮らしか、車の中か、寝袋だからな!?
一軒家暮らしじゃないからな!」

少年の驚く様子が余計に楽しくて、私はクスクス笑いながら、別荘の玄関の黒い扉を開けて中に入り、背後にいる少年へと顔を向けて振り返って

「人間は、その狭いテントで寝るのか?
私はこの家のベットでぐっすり寝ようと思うのだが。」

少年は慌てながら、私の後を追い、別荘へと入っていった。






別荘の中は、緑色の絨毯を敷き詰め、壁も浅い緑色、その中で動いているロボットも全部緑色に塗装して、自然をテーマに作ってある。
元々、この別荘もロボットも、働かなくて良い国(1国目)の廃墟に行って、入手した物だらけ。
よく考えたら、ロボットって素敵。
人間と違って、壊れない限り、老化せずに動き続ける。
少年の方は別荘の内総を見て、あちこちで驚いていた。

「なんだよ!
全部緑色!?
いや、ロボットがたくさんある!?
すげぇー!」

クスクスクス。
なんだろう、少年が驚くと楽しい。
このまま家のあちこちを紹介したら、どんなリアクションを返すのだろう。

「お譲さんの家スゲェー!」








まずはトイレに招待してみた。
私は排泄をしないから、全く要らないのだが、ロボットが勝手に作ってしまったんだ。
なんでも、人間はトイレがないと駄目らしい。

「すげぇー!
このトイレすげぇー!」

トイレの形状は、腰かけて座るタイプの洋式のトイレで、中央にお尻を自動洗浄する装置がある。
少年はトイレのあちこちに乱暴に触って、トイレの蓋が自動的に開閉される機能や、流れる人工音声に驚いていた。

【お尻ヲ洗浄シマス】

「うおー!
なんか声が出てる!
ハイテクだぁー!
すげぇー!
ぎゃぁー!顔にお湯がぁー!」

トイレに顔を近づけすぎたせいで、お尻を自動洗浄する装置から出たお湯を被り、熱くて痛そうにしている。
クスクスクス。
なんだろう。この気持ち。
少年といるだけで愉快になる。
トイレって、こんな使い方も出来る道具だったのか。

「熱いけど、すげぇー!
お譲さんの家すげぇー!
うひょぉー!
これ綺麗なお湯だぁー!」

なるほど、お尻を自動洗浄する装置で、顔を洗えるのか。
人間の作る発明品は不思議だ。
清潔な水だけど、排泄をする場所で顔を洗うなんて頭が可笑しい。












次は風呂に行ってみた。
お風呂は、10m×10mサイズの広大な物で、各所に私が集めた石像コレクションがあり、真ん中のライオン像の口から、お湯がドバドバ溢れている。
これも私には必要がない設備。
魔法で一瞬で綺麗な身体になれるから必要ないけど、定期的にここに入ってゆっくりするんだ。

「すげぇー!
こんな巨大な風呂見た事ねぇー!
お、お譲さん!?」

私はテクテク歩いて、一気にお風呂の中に浸かった。
ローブがお湯を吸って、身体がちょっと重たい。

「なんで服を脱がないんだ?!
風習か?!
ちくしょうっー!」

どうやら人間は風呂に入る時に、全裸になるらしい。
風呂という設備そのものが、私にとっての遊びだから、知らなかった。
なるほど、通りで服を着たままだと、重くて辛い訳だ。

「お譲さん!
風呂に入る時は、こうやって服を脱いで入るんだ!
ほら、お譲さんも脱いで!」

なんか、ちっちゃい。
クスクスクス

「笑うなぁー!」

よし、私も脱ぐか。
ローブ以外、何も装着してないから、脱ぐのは楽だぞ。

「ラッキー!
人間の男の前で、それは駄目ぇー!」











風呂が終わった後は食卓がある大きな居間へと来た。
白いテーブルクロスが食卓にかけられており、そこに次々と人型のロボットが料理を置いていく。
光と水だけでエルフは生きていけるけど、私の味覚は人間と似たようなもの。
食事も人間同様に楽しめる。
食卓には、マグロの寿司、マグロの刺身、マグロの頭、目玉があった。
マグロは低温で脂肪が溶けるから、甘味があって私は気にいっている。
この別荘を置いてある場所は、ここから遠く離れた島だから、このマグロはロボットが海から取ってきたのだろう。

「すげぇー!
すげぇ御馳走!
こんなでかい魚は初めて見た!」

少年が無邪気に騒いでいる様子を余所に、私はマグロの刺身を手に取って、口に入れる。
ふむ。
少し腐ってるな。
すぐに無毒化したから、私には何の影響もないが少年が食べたら危ないかもしれない。

「いただきます!」



「うめぇー!」

マグロの刺身を食べちゃった。
次々と寿司、刺身に手を出して、手づかみで食べている。
私は黙って、その光景を見て10分ほどゆっくりしていると、少年がお腹を両手で抱えて痛そうにしていた。
お腹を壊したようだ。

「いだいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
トイレを借りてくるうううううううううううう!!!!」

少年は部屋から走って立ち去った。
クスクスクス。
人間は見ているだけで面白い。
この少年と旅をするのもいいかもしれないな。妖精さん

「今まで僕をずっと無視してたよね!?
ラッキーの鬼畜ぅっー!」

少年が面白くて、妖精さんの声を聞くの忘れてた。
ごめん。
妖精さんに謝っていると、部屋の外から少年の悲鳴が響いた。

「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!
なんで廊下に、ライオンがいるんだああああああああああ!!!!!!」

ああ、ペットの猫がいる事を、少年に教える事を忘れてた。
そうか、少年の国だと、猫をライオンと呼ぶのか。
人間より大きくて、ガォーって叫ぶ所が愛らしいのに、なぜ怖がる。

「ラッキー!
早く助けないと人間死んじゃうよ!」

え・・・・?死ぬ・・・・?
猫だぞ・・・・?
訳が分からない。
私も急いで立ちあがって、少年の後を追いかけた。
すると、そこには猫と戯れている少年の姿が!

「頭から血を流してるよ!
早く、魔法で治してあげなよ!」

猫のニャーベェーが、少年の頭に被りつき、鋭く尖った牙を深く刺していた。
人間は・・・・猫と一緒に暮らせない生き物だったのか。
ふぅ。
衝撃の新事実が何度も発覚するから、笑い死にそう。
クスクスクス。
まさか猫と戯れるだけで死にそうになるなんてクスクスクス。

「笑ってないで早く治してあげなよ!
出血多量で死んじゃうよ!」

笑い死にそう。
お腹痛い。
喉辛い。
生きてるの楽しい。










後篇に続く。


前にゆっくり戻るよ! ゆっくり次に進むよ!
無職エルフ


3 件のコメント :

  1. (´・ω・`)一人称じゃなくて、3人称にしないといけないタイプの小説だったどん・・・

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  2. なんで”お譲さん”なの?
    譲(ゆず)る?久石譲?

    返信削除
    返信
    1. (´・ω・`)管理人のパソコンで【おじょうさん】と変換すると、誤変換されたんじゃよ。

      削除

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