2話--犬で皆をリラックスさせよう!終 【なぜ、成功するのか教えてやろう。俺が勘違い系主人公だからだっ!】
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公開日: 2016年4月3日日曜日 なぜ、成功するのか教えてやろう。俺が勘違い系主人公だからだっ! 自作小説
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「お主すごいのぅっ!」
荒んだ男の心を癒すキャバクラで、可憐な声が響いた。
「肉の両面焼きなんてどんな発想したら考えつくんじゃ!
やばいのぅっ!天才じゃよっ!美味そうじゃのうっ!」
声の主は、笑顔を浮かべる銀髪のエルフ娘。大雑把な性格なのか体操服を着ている。
彼女は必死に、鉄板の上で肉を焼いている中年男を褒め、その行為を英雄中の英雄であるかのように賞賛し続けた。
「肉汁を肉の中に閉じ込める発想がしゅごいのぅっ!
きっと、お主は会社でモテモテじゃな?
ワシにはっ!分かるんじゃよ!」
「……」 褒められた中年は辛そうな顔をして、身体をプルプルと震わせていた。
「旨そうじゃのぅっ!肉の焼き方が達人じゃのぅっ!
お主は世界一、肉を焼くのが上手い男に違いな――」
「……俺を馬鹿にしているのか!
肉焼いただけで褒めるとかっ……俺の心が辛くなって自殺したくなるわっ!
褒める場所が全然違うだろ!?
それでも商売女かよ!」
「えと……に、肉の焼き方が上手いんじゃよっ……?」エルフ娘は意味が分からないという風に首を傾げた。
「俺はもう二度とっ!この店に来ないぞ!」
中年男が店から出ようとする――焦ったエルフ娘は男の服の裾を掴み、涙目になりながら引き止める。
「ま、待つんじゃよ!?
お主が帰ったら、失業して、身体を売らないといけなくなるんじゃよ!?」
「淫魔ちゃん達の方がエッチィからっ!
ロリなエルフっ!略してロリフにそんな需要はないっ!
なんでっ!他のテーブルは妖艶なエルフ娘がいるのに、俺の席はロリフなんだよ!
俺はロリコンじゃねぇっー!
俺が求めるエルフはっ!妖精みたいな娘でっ!それでいて巨乳でっ!神秘的な美少女なんだよぉー!」
「ワ、ワシだって生活がかかってなかったら、こんな所には居ないんじゃよ!?
お主には分かるかの?
骨をペロペロ舐めて飢えを凌ぐ辛さを知らんじゃろ!?」
エルフ娘の怪力で、中年男はズルズルと店内に引き戻されそうになる。
そのせいで、店内の楽しい雰囲気がぶち壊し。
夢を求めてやってきた男性客達が、急に現実に目覚めて「人生クソゲーだぁ……」と呟き始めた。
そんな時だ。怖い営業スマイルを浮かべる店長さんが……エルフ娘の背後からやってくる。
彼はエルフ娘、もとい、セイルンの肩に手を置いて――
「セイルン君……明日から来なくて良いよ。
これ、今日の給料ね。
遠慮なく食べて良いよ」
焼いた牛肉を直接プレゼントされ、少女の顔が、暗黒の絶望に染まった。
~~~~~~~
「……世間は辛いのぅ。
独裁者やって、好き放題やっていた頃が懐かしいのぅ。
昔に戻りたいのぅ」
無職にクラスチェンジしたセイルンは、エルフ耳を下に垂らしながら、狭い自宅で酒を煽って自棄酒(やけざけ)をやっていた。
一度、権力者として贅沢を極め、世界最大規模の人物像を作ったり、大勢の人間を奴隷にしてゆっくりしていた栄光の日々を、酒と給料の牛肉とともに懐かむ。
そして思い出す、今の彼女は家賃が安い公営住宅に住むロリフに過ぎなかった。
飲む酒も、外国産の高級酒ではなく、市販されている安いビール。
ビール工場の労働者のおかげで、喉越しが素晴らしく美味いビール。
それが余計に彼女を苦しめる。
このビールこそが、セイルンが国の支配者だった頃よりも、人民の生活が豊かになっている証だ。
セイルンが王様やっていた頃は、庶民の飲む酒は不味かった。
(どうにかして、ワルキュラを倒して、王様として君臨したいのぅ……。
でも、国中に見えない化物どもがウヨウヨしとるし、口に出すことも出来なくて困ったのぅ……)
かつての栄光を取り戻す手段は、ほぼ皆無だ。
かつてあったセイルン王朝の代わりに、この地を支配するワルキュラ帝国は、恐ろしいくらい統治が安定している。
だから、セイルンは今の辛さを凌ぐために、現実から逃避した――妄想は蜜の味。
(犬と一緒に、大きな白い家で暮らしたいのう。
働かなくても、金が勝手に地面から生えてきて、メイドや執事がたくさんいる暮らしがええのう。
そんで、書いた本が世界的な大ヒットをして、超人気になれたらええなぁ……。
皆がワシを褒めたたえて、永遠にこの国を支配して贅沢したいのう……)
妄想の中の自分は自由だ。
空を飛ぶ事もできるし、世界の支配者にだってなれる。
しかし、妄想の世界に生きようにも、セイルンは現実を知りすぎた――
(……貧乏な一人暮らしは寂しいのう。
ワシの収入じゃとペット飼えないし、どうすればええかの?
犬とか、犬とか、飼いたいのぅ。
モフッモフッで毛並みがキャワワッ!なワンコを飼いたいのぅ……)
『パピっ!プペっ!ポッー!』
少女の望みを叶えるかの如く、自宅のピンポンが鳴った。
セイルンは軽い腰を上げ、玄関へ向かう。
すると、そこに居たのは――郵便配達の冴えないおじさんだ。既に荷物が玄関に置かれている。
玄関の扉は開いたままだ。
「不法侵入かの!?勝手に入ってくる時点で頭が可笑しいじゃろ!?
謝罪と賠償を要求するんじゃよ!」
「宅配便ですっー!サインは要らないから荷物だけお受け取りくださいっー!」
「ワシのツッコミを無視!?
お主、宅配業者の振りした偽物じゃろ!?
サイン要らないとか、非常識すぎるじゃろ!?
ま、まさかっ……!
ワシの初々しい体が目当てっ……!?ま、待つんじゃよ――」
「ふざけんな。
ロリフなんかに興味ねぇよ。
もう少しオッパイ大きくなってから言え、チッパイ」冷たい目線をロリフに向ける宅配業者。
「なんじゃその態度っ!?ひどすぎるじゃろ!?
セクハラで訴えても良いんじゃよ!?」
「あんっ?
俺はお前のせいで、学校の同級生全員死んでるんだよっ!
殺されないだけありがたいと思えっ!
ほらっ!荷物を受け取れよ!ワルキュラ様からだっ!」
彼(やす)は強引に荷物を放置し、玄関から去った。
人民から恨みを買いまくった覚えがあるから、あの宅配業者が誰だったのか、セイルンには分からない。
本編見てない読者にも分からない。
ただ理解できることは――目の前の荷物(ダンボール)は、きっとやばい。
ワルキュラ。死の支配者にして、魂を貪り喰らう化物(誤解)。
定期的に、色んな物を送ってくれるから、それを売って生活費の足しにしているが、百回に一回の頻度でとんでもないものが入っている。
(ど、どうか、まともな物でありますようにっ……。
出来れば高級米だったら嬉しいのう……ん?ワンコ?)
ダンボールの表紙には、『犬』と書かれていた。
大抵、この文字には嘘はない。
その通りの物が入っている確率は99%……だが、開けてみるまで、何が入っているのかは分かりはしない。
(いや、生き物を宅配するとか、常識なさすぎるじゃろっ……。
途中で死んだらどうするつもりだったんじゃろ?
でも、ワシの寂しさを紛らわせるなら、ちょうどええかの?)
普通の犬ですら、ペットショップでの販売価格はセイルンの月収を軽く超える。
こうやってプレゼントでもされない限り、犬を所有するのは無理だろう。
食費の問題は、飲食店でアルバイトでもして残飯を貰えば解決できる。
(可愛い犬じゃとええなぁ)
セイルンはダンボールの封を開ける。すると、そこには――ワンコが居た。
元気が有り余っていて、活気溢れる犬。
つぶらな瞳は――ない。顔には何もない。
モフッモフッな毛並みもない。肉もない、目玉もない。
あるのは――あるのは―
「わぅーん!」
犬の骨で構成された化物。アンデッドの一種『骨犬』がそこにいた。
死んだ犬が、暗黒魔法の力で蘇った化物である。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
驚いたセイルンは、すぐに玄関から逃げ出し、家の外に出た。
その後ろを、骨の犬が追い掛け「わぅぅーん!」と可愛らしく鳴きながら、尋常じゃない勢いで追いかけてくる。
犬の外見が怖すぎた。少女に懐いているというより、これから食い殺してやるっ!という行為の現れにしか見えなかった。
「ワ、ワシが何をしたというんじゃぁぁぁぁぁっ!!」
正直、セイルンには何が何だか分からなかった。
骨犬を送りつけたワルキュラの意図が全く読めない。
いや、考察するだけ無駄だ。
死の超越者が考える事を察するのは常人には難しい。
今やるべき事は――骨犬を仕留めて、死者を灰へと返してやるのみ。
「あっちに可愛いメス犬がおるんじゃよー!」あらぬ方向を指し示すセイルン。
「わぅーん!」
骨犬がそれに反応して、後ろを振り向いた。もし、ワルキュラがこの現場を見たら『人語を理解できる頭の良いペットの証だ』と言って、喜ぶだろう。
骨犬に隙が出た瞬間、セイルンは呪文を高速詠唱。
膨大な魔力を、夜の闇から集めて――
「死者はあの世に帰るんじゃよっー!
ダークボールっ!」
無差別破壊用の暗黒魔法を手のひらから出して叩き込む。
黒い球体が、骨犬へと高速で迫り、大爆発。
近くにあった屋台が一つ吹き飛び、セイルンの借金が瞬時に増えまくった。
「殺ったかの?」
爆発の煙が晴れると、そこには――無傷の骨犬が居る。
「わぅぅん?」
信じられない頑丈すぎる骨だった。
この魔法、下手したら厚い鉄板すら粉砕できる破壊力のはずなのに可笑しい。
そうセイルンは思ったが――
「そうじゃった!
アンデッドには暗黒魔法は通用し辛いんじゃった!」
「わぅーん!」
「ワ、ワシは生き延びるんじゃよぉぉぉぉ!!!!」
体操服を着ているエルフ娘はひたすら走った。
そして、必ず邪悪なる邪神ワルキュラを打倒しなければならぬと決意した。
エルフ娘は独裁者だった癖に、政治が分からぬ。
だが、人一倍、自分の命の危機に関しては敏感だった。
夜の街を、太陽が落ちるのと同じ速度で駆け抜けた気分になって、骨犬が彼女の後ろから迫って――
「わぅーん!わぅーん!」
「あっー!」
~~~
ワルキュラが玉座にふんぞり返って、2時間。
大臣のヤスが帰ってきた。彼の仕事をやり遂げた感じの笑顔に、ワルキュラの心もホッコリした。
「犬をもらったセイルンは喜んでいたか?」
「泣いて逃げ回ってました、ワルキュラ様」
(なるほど……この政策はダメだな。
世の中には犬嫌いの人間がたくさんいる。
そもそも食品工場や運送業者関連だと、毛が混入したら大問題になるからな。
この政策はやめておこう)
そして――
(セイルンが犬嫌いとは知らなかった……あんなに可愛いのに、なぜ嫌うのか俺には分からない……。
次は猫を送ろう。きっと可愛がってくれるはずだ)
荒んだ男の心を癒すキャバクラで、可憐な声が響いた。
「肉の両面焼きなんてどんな発想したら考えつくんじゃ!
やばいのぅっ!天才じゃよっ!美味そうじゃのうっ!」
声の主は、笑顔を浮かべる銀髪のエルフ娘。大雑把な性格なのか体操服を着ている。
彼女は必死に、鉄板の上で肉を焼いている中年男を褒め、その行為を英雄中の英雄であるかのように賞賛し続けた。
「肉汁を肉の中に閉じ込める発想がしゅごいのぅっ!
きっと、お主は会社でモテモテじゃな?
ワシにはっ!分かるんじゃよ!」
「……」 褒められた中年は辛そうな顔をして、身体をプルプルと震わせていた。
「旨そうじゃのぅっ!肉の焼き方が達人じゃのぅっ!
お主は世界一、肉を焼くのが上手い男に違いな――」
「……俺を馬鹿にしているのか!
肉焼いただけで褒めるとかっ……俺の心が辛くなって自殺したくなるわっ!
褒める場所が全然違うだろ!?
それでも商売女かよ!」
「えと……に、肉の焼き方が上手いんじゃよっ……?」エルフ娘は意味が分からないという風に首を傾げた。
「俺はもう二度とっ!この店に来ないぞ!」
中年男が店から出ようとする――焦ったエルフ娘は男の服の裾を掴み、涙目になりながら引き止める。
「ま、待つんじゃよ!?
お主が帰ったら、失業して、身体を売らないといけなくなるんじゃよ!?」
「淫魔ちゃん達の方がエッチィからっ!
ロリなエルフっ!略してロリフにそんな需要はないっ!
なんでっ!他のテーブルは妖艶なエルフ娘がいるのに、俺の席はロリフなんだよ!
俺はロリコンじゃねぇっー!
俺が求めるエルフはっ!妖精みたいな娘でっ!それでいて巨乳でっ!神秘的な美少女なんだよぉー!」
「ワ、ワシだって生活がかかってなかったら、こんな所には居ないんじゃよ!?
お主には分かるかの?
骨をペロペロ舐めて飢えを凌ぐ辛さを知らんじゃろ!?」
エルフ娘の怪力で、中年男はズルズルと店内に引き戻されそうになる。
そのせいで、店内の楽しい雰囲気がぶち壊し。
夢を求めてやってきた男性客達が、急に現実に目覚めて「人生クソゲーだぁ……」と呟き始めた。
そんな時だ。怖い営業スマイルを浮かべる店長さんが……エルフ娘の背後からやってくる。
彼はエルフ娘、もとい、セイルンの肩に手を置いて――
「セイルン君……明日から来なくて良いよ。
これ、今日の給料ね。
遠慮なく食べて良いよ」
焼いた牛肉を直接プレゼントされ、少女の顔が、暗黒の絶望に染まった。
~~~~~~~
「……世間は辛いのぅ。
独裁者やって、好き放題やっていた頃が懐かしいのぅ。
昔に戻りたいのぅ」
無職にクラスチェンジしたセイルンは、エルフ耳を下に垂らしながら、狭い自宅で酒を煽って自棄酒(やけざけ)をやっていた。
一度、権力者として贅沢を極め、世界最大規模の人物像を作ったり、大勢の人間を奴隷にしてゆっくりしていた栄光の日々を、酒と給料の牛肉とともに懐かむ。
そして思い出す、今の彼女は家賃が安い公営住宅に住むロリフに過ぎなかった。
飲む酒も、外国産の高級酒ではなく、市販されている安いビール。
ビール工場の労働者のおかげで、喉越しが素晴らしく美味いビール。
それが余計に彼女を苦しめる。
このビールこそが、セイルンが国の支配者だった頃よりも、人民の生活が豊かになっている証だ。
セイルンが王様やっていた頃は、庶民の飲む酒は不味かった。
(どうにかして、ワルキュラを倒して、王様として君臨したいのぅ……。
でも、国中に見えない化物どもがウヨウヨしとるし、口に出すことも出来なくて困ったのぅ……)
かつての栄光を取り戻す手段は、ほぼ皆無だ。
かつてあったセイルン王朝の代わりに、この地を支配するワルキュラ帝国は、恐ろしいくらい統治が安定している。
だから、セイルンは今の辛さを凌ぐために、現実から逃避した――妄想は蜜の味。
(犬と一緒に、大きな白い家で暮らしたいのう。
働かなくても、金が勝手に地面から生えてきて、メイドや執事がたくさんいる暮らしがええのう。
そんで、書いた本が世界的な大ヒットをして、超人気になれたらええなぁ……。
皆がワシを褒めたたえて、永遠にこの国を支配して贅沢したいのう……)
妄想の中の自分は自由だ。
空を飛ぶ事もできるし、世界の支配者にだってなれる。
しかし、妄想の世界に生きようにも、セイルンは現実を知りすぎた――
(……貧乏な一人暮らしは寂しいのう。
ワシの収入じゃとペット飼えないし、どうすればええかの?
犬とか、犬とか、飼いたいのぅ。
モフッモフッで毛並みがキャワワッ!なワンコを飼いたいのぅ……)
『パピっ!プペっ!ポッー!』
少女の望みを叶えるかの如く、自宅のピンポンが鳴った。
セイルンは軽い腰を上げ、玄関へ向かう。
すると、そこに居たのは――郵便配達の冴えないおじさんだ。既に荷物が玄関に置かれている。
玄関の扉は開いたままだ。
「不法侵入かの!?勝手に入ってくる時点で頭が可笑しいじゃろ!?
謝罪と賠償を要求するんじゃよ!」
「宅配便ですっー!サインは要らないから荷物だけお受け取りくださいっー!」
「ワシのツッコミを無視!?
お主、宅配業者の振りした偽物じゃろ!?
サイン要らないとか、非常識すぎるじゃろ!?
ま、まさかっ……!
ワシの初々しい体が目当てっ……!?ま、待つんじゃよ――」
「ふざけんな。
ロリフなんかに興味ねぇよ。
もう少しオッパイ大きくなってから言え、チッパイ」冷たい目線をロリフに向ける宅配業者。
「なんじゃその態度っ!?ひどすぎるじゃろ!?
セクハラで訴えても良いんじゃよ!?」
「あんっ?
俺はお前のせいで、学校の同級生全員死んでるんだよっ!
殺されないだけありがたいと思えっ!
ほらっ!荷物を受け取れよ!ワルキュラ様からだっ!」
彼(やす)は強引に荷物を放置し、玄関から去った。
人民から恨みを買いまくった覚えがあるから、あの宅配業者が誰だったのか、セイルンには分からない。
本編見てない読者にも分からない。
ただ理解できることは――目の前の荷物(ダンボール)は、きっとやばい。
ワルキュラ。死の支配者にして、魂を貪り喰らう化物(誤解)。
定期的に、色んな物を送ってくれるから、それを売って生活費の足しにしているが、百回に一回の頻度でとんでもないものが入っている。
(ど、どうか、まともな物でありますようにっ……。
出来れば高級米だったら嬉しいのう……ん?ワンコ?)
ダンボールの表紙には、『犬』と書かれていた。
大抵、この文字には嘘はない。
その通りの物が入っている確率は99%……だが、開けてみるまで、何が入っているのかは分かりはしない。
(いや、生き物を宅配するとか、常識なさすぎるじゃろっ……。
途中で死んだらどうするつもりだったんじゃろ?
でも、ワシの寂しさを紛らわせるなら、ちょうどええかの?)
普通の犬ですら、ペットショップでの販売価格はセイルンの月収を軽く超える。
こうやってプレゼントでもされない限り、犬を所有するのは無理だろう。
食費の問題は、飲食店でアルバイトでもして残飯を貰えば解決できる。
(可愛い犬じゃとええなぁ)
セイルンはダンボールの封を開ける。すると、そこには――ワンコが居た。
元気が有り余っていて、活気溢れる犬。
つぶらな瞳は――ない。顔には何もない。
モフッモフッな毛並みもない。肉もない、目玉もない。
あるのは――あるのは―
「わぅーん!」
犬の骨で構成された化物。アンデッドの一種『骨犬』がそこにいた。
死んだ犬が、暗黒魔法の力で蘇った化物である。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
驚いたセイルンは、すぐに玄関から逃げ出し、家の外に出た。
その後ろを、骨の犬が追い掛け「わぅぅーん!」と可愛らしく鳴きながら、尋常じゃない勢いで追いかけてくる。
犬の外見が怖すぎた。少女に懐いているというより、これから食い殺してやるっ!という行為の現れにしか見えなかった。
「ワ、ワシが何をしたというんじゃぁぁぁぁぁっ!!」
正直、セイルンには何が何だか分からなかった。
骨犬を送りつけたワルキュラの意図が全く読めない。
いや、考察するだけ無駄だ。
死の超越者が考える事を察するのは常人には難しい。
今やるべき事は――骨犬を仕留めて、死者を灰へと返してやるのみ。
「あっちに可愛いメス犬がおるんじゃよー!」あらぬ方向を指し示すセイルン。
「わぅーん!」
骨犬がそれに反応して、後ろを振り向いた。もし、ワルキュラがこの現場を見たら『人語を理解できる頭の良いペットの証だ』と言って、喜ぶだろう。
骨犬に隙が出た瞬間、セイルンは呪文を高速詠唱。
膨大な魔力を、夜の闇から集めて――
「死者はあの世に帰るんじゃよっー!
ダークボールっ!」
無差別破壊用の暗黒魔法を手のひらから出して叩き込む。
黒い球体が、骨犬へと高速で迫り、大爆発。
近くにあった屋台が一つ吹き飛び、セイルンの借金が瞬時に増えまくった。
「殺ったかの?」
爆発の煙が晴れると、そこには――無傷の骨犬が居る。
「わぅぅん?」
信じられない頑丈すぎる骨だった。
この魔法、下手したら厚い鉄板すら粉砕できる破壊力のはずなのに可笑しい。
そうセイルンは思ったが――
「そうじゃった!
アンデッドには暗黒魔法は通用し辛いんじゃった!」
「わぅーん!」
「ワ、ワシは生き延びるんじゃよぉぉぉぉ!!!!」
体操服を着ているエルフ娘はひたすら走った。
そして、必ず邪悪なる邪神ワルキュラを打倒しなければならぬと決意した。
エルフ娘は独裁者だった癖に、政治が分からぬ。
だが、人一倍、自分の命の危機に関しては敏感だった。
夜の街を、太陽が落ちるのと同じ速度で駆け抜けた気分になって、骨犬が彼女の後ろから迫って――
「わぅーん!わぅーん!」
「あっー!」
~~~
ワルキュラが玉座にふんぞり返って、2時間。
大臣のヤスが帰ってきた。彼の仕事をやり遂げた感じの笑顔に、ワルキュラの心もホッコリした。
「犬をもらったセイルンは喜んでいたか?」
「泣いて逃げ回ってました、ワルキュラ様」
(なるほど……この政策はダメだな。
世の中には犬嫌いの人間がたくさんいる。
そもそも食品工場や運送業者関連だと、毛が混入したら大問題になるからな。
この政策はやめておこう)
そして――
(セイルンが犬嫌いとは知らなかった……あんなに可愛いのに、なぜ嫌うのか俺には分からない……。
次は猫を送ろう。きっと可愛がってくれるはずだ)
(´・ω・`)本編(ほね・骨 ・Bone!!)の方。
一章終わり辺りまで書いたけど、ずーとひたすら戦争パートで、内政パートに割ける割合が皆無に近いから、こっちで溜め込んだネタを消化するどん
ワルキュラ(´・ω・`)☚肉のある普通の犬を送ったと思ってる奴
大臣のヤス(´・ω・`)☚宅配業者に変装して、骨犬を送った奴
今回のコメントまとめ+ 小ネタの感想まとめ http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Dakara_isekai/c2.html
【小説家になろう】 二次創作「他作品のキャラに憑依して、別作品でチートする!」http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/blog-post_3.html
ゆっくり次に進むよ! |
(´・ω・`)二度目の修正ゆっくり官僚
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