20話 詐欺戦争-2 「ハンバーガーとコーラ美味しいよね」 【LV0の不死王!~骨、ほぉね、ボーン!~】
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公開日: 2016年4月25日月曜日 LV0の不死王 自作小説
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水堀に囲まれたカイロンの城壁。
そこで作業をしている青年…… ヤスには、些細な夢があった。
妻と子供達、そして、異世界に拉致られた日本人達と一緒に日本に帰り、経営が悪化したマクドナルドのハンバーガーショップで、牛肉をパンで挟んだ安っぽいハンバーガーと、炭酸たっぷりのシュワシュワっのコーラを注文して食べる。
現代に生きる日本人から見れば、貧困層でも簡単に達成できる夢だが、異世界にはコーラーもハンバーガーもない。
肉はとても腐りやすいから基本的に塩漬け肉。新鮮で美味しい肉を日本人奴隷が口にする事は滅多にないし、コーラなんてそもそもアメリカの薬剤師ペンバートン博士が開発した『爽やかで元気が出る飲み物』だから自力で作るのは困難すぎた。
「おいっ……俺は夢を見ているんだよなっ……?
これ、本物かっ……?」
今、ヤスの両手に熱いハンバーガーとコーラがある。
ワルキュラ軍に就職して、戦勝祝いに食べ物を貰ったら、この食べ物が出てきたから驚愕した。
しかも、食料を配っていたダークエルフ達は、何もない空間から次々と食料を取り出していたのである。
これが意味する事はすなわち――膨大な物資を遠くに転送する手段、あるいは異次元を倉庫代わりにするなどの方法で、ワルキュラ軍が尋常じゃない量の物資を保有している事を意味した。
(……いや、今はそんな事はどうでも良い)
すぐにやるべき事は知的好奇心より、目先の食欲を満たす事。
「夢なら永遠に覚めるなよっ……!
この夢が永遠に続けっ……!」
ヨダレを垂らしたヤスは、ハンバーガーに齧り付く。
肉汁が滴り落ちて、旨みが口全体に広がる。
日本で食べたハンバーガーとは全く異なる味だったが、和風ソースが絶妙すぎた。
これは安っぽいチェーン店で作ったハンバーガーではない。レストランで作られた高給バーガーのような極上の味わいだ。
(肉を食べた後にやる事は……もちろんこれだよな!
高校時代を思い出す!青春時代が俺に戻ってきた!)
ハンバーガーを、じっくり時間をかけて楽しんだヤスは、次はコーラを飲む。
炭酸の活気あふれる味わいと甘さ。その二つが重なり合って……体の底から元気が出てきた。
これはただのコーラではない。
短時間で効力を発揮するエナジードリンクだ。
健康食品業界で問題になっている『効果が実感できないからもうお前の商品買わないわ』というお客さんすら満足させる品。
すぐに全身から活力が染み渡り、生きる希望まで湧いて出てくる。
ヤスの隣にいた後輩の犬少年のニャンニャンも、涙を流しながら、銀色の尻尾を横に元気よくフリフリ動かし、食の感動をハンバーガーを味わい、感想をヤスに漏らしていた。
「もっふぅ~!
もっふふぅ~!」
「口の中のハンバーガーを食べてから話せよっ……」
「もっふぅっー!ゴクンッ!
極上の味です!先輩!
こんな美味しい肉を食べるのは初めてです!」
十代前半に見える愛らしい銀髪犬耳少年。その嬉しそうな姿を見るだけで、ヤスも楽しい気分になれた。
そして、ワルキュラが来て、まだ一日も経過してないのに、ここまで待遇が改善するとは誰も思わなかった。
セイルン王が統治していた頃は、もう酷かった。
食糧を最小限しか貰っていないのに、日本人が十年かけて出すウンコを、一年以内に肥料として納めろと命令されて酷い目にあったり、ウンコ泥棒が続出したり。
飢饉の時に飢えた日本人奴隷が、タマネギを盗んで処刑されたりと散々だっただけに、貴重な財産を湯水のようにばら撒くワルキュラに忠誠を誓いたくなった。
気前のいい君主は、いつの時代も好まれるものだ。
「もっふぅ~。
毎日食べたい味ですね~、先輩」
「明日からは、水草スープらしいけどな。
まぁ、この戦争終わったらきっとハンバーガーを毎日食べられる未来がやってくるさ。
そしたら、俺は出世して子供達に腹いっぱい食わせてやるんだ……」
「もっふー!」ニャンニャンの銀色の猫耳が元気よく動いた。
二人は元気よくハンバーガーを平らげ、コーラを飲み、ワルキュラ軍が設置したゴミ箱に容器を捨てた。
地球のシンガポールみたいに、衛生環境まで配慮した綺麗で清潔な都市になりそうな、そんな未来が彼らに待っていそうだ。
休憩を名残惜しげに終えた彼らは、城壁の床に置かれた偽物の骸骨を次々と運び出し、城壁の上にそれらを飾り立てる。
本物の人骨を使っているとしか思えない。そんな精巧さがある偽の骨だ。
これは敵の遠距離攻撃を分散させ、自軍の被害を減らす。そんな効果があるダミー。
元々、ワルキュラ軍は地下に籠って、敵と騙し合いをやりながら戦争するタイプの軍隊という事もあり、こういう小細工に使える道具は、アイテムボックス内に大量にある。
(なんだろうなっ……処刑した人間を並べている感覚だなっ……。
ヤスコ、ヤスノリ。お父さんは汚い仕事でもお前達のためなら頑張れるぞっ……。
セイルンの馬鹿が上司だった頃よりは、給料良さそうだし、腹一杯食わせてやるからな……)
そうやってヤスが、本物そっくりの偽骨を並び立たている内に、城壁の内側に――人間の群れができていた。
列の先頭には、露出が紅いチャイナ服を着たダークエルフ娘のラーラがいる。
褐色の肌は健康的で、男を魅惑するダイナマイトっ!ボディにっ!、ヤスの目は釘付け状態。
(うほほーい)残念だけど、男は愛しい妻が居ても、不倫したがる生き物なのよね。
次の瞬間。ヤスの心臓が凍りついた。
ラーラが、飾り立てた偽の骨を指し示し、膨大な人民達に向けて説明を開始したからだ。
「あれがワルキュラ様に逆らったら人間の末路じゃよ。
その目によく焼き付けて、逆らう事の愚かさを悟って欲しいかの?」
(はっ?)
「ワルキュラ様は、とってもとっても怖いお方での。
逆らったら、死より怖い苦痛を味あわせて、魂をバリバリっと貪り食べてしまう。
そんなお方なんじゃよ。
お主らも逆らったら……どうなるか分かるかの?」
ワルキュラ本人が聞いたら『こんな時に新兵の教育マニュアル通りに行動するのはらめぇー!』と叫びたくなるような嘘八百な内容。
だが、恐怖で煽られた人民達は、唾を飲み込んで、大量に飾り立てられた偽の骸骨を見つめる。
独裁者に逆らったら制裁される現実。それは異世界だろうが、地球だろうが変わらない。
読者さん達が住む日本のすぐ近くだって、権力闘争に破れた人間が数十万人単位で辺境送りにされたり、強制労働施設で数年以内にバタバタ死にまくる北朝鮮という地上の地獄がある。
恐怖は――人を支配するのに効率が良い方法なのだ。
台湾の蒋介石ならば『99人誤射しても一人を殺せばいいや』
中国の毛沢東ならば『若い少年達使って、一千万人虐殺して恐怖政治する!』
しかも、人間は危機に晒された後に、助けられると相手の子分になりやすい性質を持つ生き物。
現実の独裁者さんが側近を得る時にも、自作自演で相手の命を危機に晒し、助けてやって恩を売り、部下を増やすのは常套手段だ。
「十分間、あの人骨を見学するんじゃよ。
そうしたら百アヘン紙幣を、優しいワルキュラ様は恵んで下さるかの。
……くれぐれも逆らったらダメなんじゃよ?
魂すら陵辱され尽くされるのは、さすがにお主らも嫌じゃろ?
ワルキュラ様は従順に従う人間には優しいから、安心して忠誠を誓うんじゃよ」
十分ごとに、城壁の下にいる人間達は入れ替わり、恐怖をたっぷり味わった後に、百アヘン紙幣を貰ってお得な気分を味わって市場へと帰って行った。
完全にこれは、飴と鞭という形で行われた国民懐柔策。
偽の骸骨を見る事が、鞭とするならば、百アヘン紙幣は飴に相当する。
そんな、日本人が目を背けるようなプチ恐怖政治に加担させられたヤスは
(これっ……実は本物の骸骨じゃっ……?)
偽物だと思って飾り立てていた骸骨を、本物だと思い込み始めた。
(本物そっくりだと思ったら……実は本当に本物の人骨っ……?
死んだ人間たちを、再利用している……?)
試しにヤスは、偽骨の頭蓋骨へとソッと触れてみた。
本物としか思えない硬い骨。精巧な作り。
人間の成れの果てとしか思えなかった。
(ヤスノリ、ヤスコ。お父さんはとんでもない職場に就職してしまったかもしれないっ……。
これら全部含めて、仕事だと考えろ、ヤス。
そうしないと家族を養えないぞっ……!
飢えるより、悪党になった方がマシだっ!)
とりあえず、ヤスが取った行動は……目の前にある骸骨は、全て偽物だと思い込む事にして、飾り立てる作業を再開する事を優先する。
給料貰えないと家族が飢えて死ぬ以上、一家の大黒柱は我慢するしかない。
奴隷が家族を得ると、居場所を守るために今まで以上に一生懸命働くのは、古代ローマ帝国の頃から変わらないリアルな現実。
守る居場所がある世間の父さん達は、こうやって労働に対する耐性を得て、血と汗を流して働いてるのだ。
恐怖でプルプル震えるヤスの傍らで、愛らしいニャンニャン少年は呑気に、偽の骸骨を木の棒に括りつけて城壁の上に立たせながら
「もっふぅ~、美味しそうな匂いがしない骨です~」
元気を失った犬耳が下に垂れた。
だが、すぐに食べ物の匂いを嗅ぎつける。
その匂いの発生源。それはカイロンの壁外に広がる砂漠からだった。
ピィザ軍が半包囲を敷いている中、大きな白旗を掲げたセイルン人の兵士達がやってくる。
セイルン人なのにピィザ軍。これは、別におかしい事ではない。
ピィザ軍の大半が、寝返ったセイルン貴族軍で構成されているのだから。
ここで一番可笑しいのは、兵士達が荷馬車を運搬している事。
荷物は塩漬け肉、乾燥肉、焼いたパンなど。
ワルキュラ軍の骸骨達は、白旗を見て、彼らを交渉の使者だと勘違いし、攻撃をうっかり中断してしまった。
ピィザ軍の兵士達は砂漠の大地を進み、水堀の手前へと進む。
膨大な食料が入った荷馬車を盾にし、大きく息を吸い、彼らは叫んだ。
「飢えた人民達よっー!
我らは圧政者から開放するためにやってきたっー!
美味しい食料を大量に用意しているぞっー!
跳ね橋を下ろしてこっちに逃げてこいっー!」
古来から城や要塞を攻略するのは下策とされてきた。
攻略するのに甚大な被害が出るし、長期戦になったら膨大な金を浪費して、国の財政崩壊を招く。
それは21世紀の地球でも変わらない。だって、ミサイルや爆弾がある現代戦でも、地下に拠点作れば大部分を防げるし。
第二次世界大戦時の硫黄島なんか、水の確保すら困難な地形なのに、米軍を困らせる厄介な存在になっていた。
そんな作者の無駄な説明を他所に、城壁にいるヤスは、ピィザ軍が持ってきた食料を見て
「乾燥肉と塩漬け肉かぁ……。
あれって味が酷いんだよなぁ……日本に帰りたい。
冷蔵庫の有り難みを、異世界に来てから知ったよ。俺」
ハンバーガーを食べた後だから、目の前の美味しい食料を見ても、羨ましいとは感じなかった。
もしも、ワルキュラ軍が食料政策を真っ先にやらなかったら、この時点で首都そのものが詰んでいたとは誰も思うまい。
今回のコメントをまとめたページ
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【内政チート】「銅には蚊の発生を抑制する効果があった!これで衛生チートする!」20世紀http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/20_7.html」
小説家になろうのテンプレ・スコップ・雑談すれ④http://suliruku.blogspot.jp/2016/01/blog-post_64.html
高い塔の上にいる奴ら
デスキング「陛下は事前に敵の手を読んで、ハンバーガーを配布しておられたのかっ……!」
リッチ「さすは陛下っス!
先読みの達人っス!」
ルビー「大豆で作ったハンバーガー美味しいです、ワルキュラ様」
ワルキュラ(魚や水草、ハンバーガーを配らなかったら……っ!
内側から貧民達が跳ね橋を下ろしまくってやばいところだった……!?
あばばばばばばばっ!)
ゆっくり次に進むよ! |
(´・ω・`)コーラを飲んだパルメ
返信削除(´・ω・`)お腹を下した。コーラが辛いよう