2話「山賊の世界　後編」戦闘記録

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公開日： 2015年12月11日金曜日 最弱のコピー魔法師 自作小説

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ゆっくり次に進むよ！

【Q.最強の魔法とは何ですか？ A. 全ての魔法が使えるコピー魔法です。どんな状況にも対応できてモテモテになれます。
　
旧題（最弱のコピー魔法師）】☚まとめたページ

「死にやがれぇー！」
「よく見たらその軍服っ！日本軍じゃねぇかぁー！」
「敵だぁー！死ねぇー！」

最初の戦闘の火蓋を切ったのは、物理操作魔法師五人による弾幕だった。
二千五百本の窒素・氷の弾丸が生成され加速。ルナ達の元へと飛んでくる。
ユキトの背中に抱っこされているルナも物理操作魔法を使い迎撃を開始した。
空気中から材料をかき集め、強引に氷の槍を作る。

「ウチは強いで～愛の力が溢れとるんよ～」

生成された五千本の氷の槍。秒速1kmになるまで加速して射出した。
お互いの攻撃同士が空中でぶつかり、防ぎきれない攻撃を氷の盾を作り出して防御する。
火力の面では、並の魔法師十人分の性能があるルナの方が上。
このまま遠距離攻撃戦を続ければ、ルナ達の勝利だ……と分析したコーネフ中佐は作戦を変更した。
周りに向かって叫ぶ。

「ガル1から5！回り込んで近接戦闘を挑め！相手は近接が苦手な物理操作魔法師だ！
残りは援護射撃！複数パターンの射撃で追いこめ！」

その言葉に、ガルのコードネームを与えられた五人の身体強化魔法師がすぐ従う。身体能力を百倍に強化したまま、ナイフを構え、左右に散開。
秒速1kmの速度で空間を切り裂き、音の衝撃波を撒き散らしながら距離を詰める。
迎撃の氷の槍が希に当たるが、強化された身体にはカスリ傷にしかならない。
このまま接近されたら、ルナ達はおしまいだ。
膨大な弾丸を飛ばしながらルナは冷や汗を流す。
――ユキト、愛しとるで～。何とかしてな～。
後50m、40m、30ｍ、20m。一気に彼らの距離が詰まった瞬間！

「やれやれ、単純な奴らだよ。
命がけの戦闘で……脳みそを動かさないのは死亡フラグなのさ」

【転移プログラムをダブル起動】

ユキトは自分達と、迫ってきた五人の身体強化魔法師の周りの空間を巻き込んで、上空百mに転移した。
足場がない場所では、身体強化魔法師は役立たず。完全に無力化された。
膨大な妄想力と演算を必要とする魔法のダブル起動で、ユキトの脳みそに少し疲労が溜まったが今の所、問題ない。

【転移プログラム停止。重力プログラム起動】

ユキトはすぐに重力を操る魔法で、反重力をその場に生み出し、惑星の重力に反発して空に浮く。
ちょうど、身体強化魔法師五人が真下で自由落下を開始し、更にその下にコーネフ中佐を含む六人の魔法師がいる。
そんな理想的な配置だ。敵は仲間が盾になっているせいで攻撃できない。
この瞬間、ユキトは勝利を確信し、小さい声で呟き、一番得意な魔法を行使する。

「チェックメイトだ」
【重力プログラムをダブル起動】

ユキトがいる場所に反重力を発生させたまま、下にいる魔法師十一人に数十倍の重力を食らわせる。
ルナはユキトの意図にすぐ気づき、五千本の窒素の槍を生成。
一気に下にいる敵に目掛けて射出した。高重力下で加速されまくった槍は、身体強化魔法師達の頑丈な身体を容易く貫き殺す。更に、その下にいる魔法師５人をくし刺しにして絶命させた。
唯一、生き残ったコーネフ中佐は、分析魔法で攻撃が来ない位置に移動。氷の槍を回避した。
だが、もう手詰まりだ。
分析魔法師は分析と計算に特化しすぎて、魔法師に通用する攻撃手段は持っていない。
すぐにその場で情けなく土下座する。

「すいませんでしたぁー！
命だけは助けて下さいぃぃぃぃ！！」
「ウチの大事なユキトを殺そうとしたんやから、オッチャン死んでもええやろ～？」
「お嬢ちゃんすいませんでしたぁぁぁぁ！！」

ユキトは一瞬、対応に困った。
国際法で降伏した敵兵は捕虜にしなければならない。
だが、ここは異世界で、今のユキトは商人だ。捕虜を連れて旅なんて出来ない。
この悪党を放置する訳にもいかない。
だから、問題を解決してあげる事にした。ユキトなりの方法で。

「分かったよ。
命だけは助けてあげよう。そう……命だけはね」
「ユキトは本当に優しい良い男やな～」

【重力プログラム停止、電子プログラム起動】

ユキトは魔法師の機械化した脳みその一部分をぶっ壊すウィルスを作成した。
設備が整った場所じゃないと、修理できない重要な部位だ。
壊されたら――魔法を使えなくなる。
それを分析魔法で理解したコーネフ中佐は両手を上げて抗議する。

「ちょ、ちょって待ってくれ！
魔法が使えなくなったらっ！どうやって生活すればいいんだよ！？」
「ここで死ぬか、魔法を使えなくなるか。
どっちかを選んでくれ、三秒以内に」

返答は容赦なかった。
コーネフ中佐は心の底で悔しがり、身体がプルプルッと震える。
――この青二才がぁっ！ロリコンの癖にぃっー！
ちくしょぉぉぉぉぉ！！俺は部下を養うためにわざわざ山賊になったんだぞぉー！
なんでドイツ軍の中佐の俺がっ！こんな目に会うんだよぉー！
ロリコンっ！ロリコンっ！ロリコンッー！あー！羨ましいっ！
小さくて可愛い娘に慕われる時点で羨ましいっ！死ね！このリア充っ！
だが、大人しく従わないと殺されると理解していたから、コーネフ中佐は……電子ウィルスに抵抗せず、素直に受け入れた。
ウィルスに感染。機械化された脳みその一部がすぐ破損する。
修理しない限り、魔法は二度と使えない。

「……ちくしょー」

自分たちに超常の力を齎してくれた魔法が使えない。
失意のどん底に立たされたコーネフ中佐。
だが、転落人生は始まったばかりだ。
重力を操作して、ゆっくり地上に降りてきたユキトたちが、次々と要求を突きつけてくる。

「君達の財産と情報を全部寄越せ。
それが君を生かす第二の条件だ」
「トラックに入り切る分だけ貰って、残りは被害者の皆さんに取りに来て貰うで～。
これからは一生懸命、地道に働いた方がいいで？おっちゃん」

悔しかった。コーネフ中佐は涙を流す。
――部下達と一緒に、汗水垂らして働いて（山賊行為）稼いだ財産を、背中にロリ娘担いだロリコンに奪われる。
金持ちのお姫様を襲って、凌辱レイプした後に手に入れた黄金像。
周辺の村人から集めた税金（略奪品）
誘拐して嫁にして孕ませた美少女達。
それが全て奪われると思うと悲しかった。涙がポツンッポツンッと目が出る。
コーネフは投げやりな気分になって叫んだ。

「全部もってけっ！泥棒ー！」




そして、財産を全てユキト達と元の持ち主達にプレゼントした結果！

「なんでこうなった？！」

コーネフは縄で縛られて、破壊・虐殺しまくった村へと放置された。
小男の顔に冷や汗が流れる。
ユキト達が乗るトラックは、荷物を満載にして村を立ち去り、すでに旅に出ていた。
今、コーネフの周りにいるのは村人達。
全員が頭に付けていたカツラを外し、鶏冠（とさか）のようなモヒカンヘアーだ。
何人も人を殺してきた凶悪な顔をしている。
手にはボウガンや斧を握っていた。

「ヒャッハー！今日から俺たちの時代だぁー！」
「魔法師どもがくたばったぞぉー！こいつどうする？」
「とりあえず地面に埋めよう！俺の息子達の仇っー！」
「殺せっ！殺せっ！殺せっ！」
「ガンホッー！ガンホッー！」

ユキト達が助けた村。
それは……普通の村に偽装した山賊達の村だった。
魔法が使えないコーネフ中佐の運命はどうなる！？

「ぎゃぁぁぁぁぁ！ノコギリで首を切断するのはやめろぉー！
助けてくれぇー！
俺は中佐なんだぞぉー！偉いんだぞぉー！
そんなぁー」

彼の人徳が今っ！試されたっ！




2話「山賊の世界」
（コーネフの人生が終了的な意味でも）おしまい

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