6話 野生の国と『蒼色ゼリー』前編
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公開日: 2015年12月4日金曜日 (✿╹◡╹)料理大好きエルフの異世界レストラン 自作小説
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野生とは? 山野で育つ事です。
野性とは? 突然目覚める本能です。動物ですから、これはどうしようもありません。
地平線まで広がる草原で、緑色の奇妙な服を着ていて、大きな緑色のアフロ・ヘアーが特徴的な勇者は戸惑った。
目の前にいる青色の粘体で構成された球形状の不思議生物……スライムの様子がどうも可笑しい。
プルプル可愛く震えて、大きな目玉で勇者を見つめている。
「僕は役に立つスライムだよ!
勇者さん!どんどん命令してね!
回復魔法も攻撃魔法も使えるよ!」
とっても従順で役に立つのだ。戦闘時には勇者の命令に従い、『本物』が使えないはずの回復魔法や攻撃魔法すら使う。
いつもは命令すら聞かない無駄飯喰らいで、ただの荷物。
それが勇者のペット『スライム』だ。
つまり、目の前で今……プルプルっと可愛く震える『有能なスライム』は偽物だ。
「……なぁ、スライム。
もしも俺が偽物で、本物を殺して成り代わった奴だとしたら……お前どうする?」
「勇者さんの仇を取るよ!
炎で燃やして苦しめた後に灰にするよ!」
キリッ!とした顔でスライムが勇敢な答えを出した。
その態度を見て、馬鹿にされたと思った勇者は怒りを覚えた。
――本物のスライムは、確かに役立たずだったさ。
足は遅くて荷物運びもできないゴミスライムだったさ。その上、餌を食べまくりで食費がかかるニート。
でもな、殺人料理魔王ジャガイモーンを倒す旅の中、常に俺を愛嬌たっぷりに励ましてくれた良い奴なんだ。
雨の日も、風の日も、晴れの日も、役に立たないお荷物だったけど……精神的には必要な奴だったんだ!
俺は許せない。
きっと、こいつは『本物』を殺して成り代わったに違いない。
よし、殺してやろう。貴様の言う通り炎でな!
勇者は荷物袋から、燃料ポットつきの家庭用火炎放射器を取り出し、棒の先端をスライムに向けた。
「ゆ、勇者さん?
僕は良いスライム――」
「偽物は消毒だぁー!」
ボォー! 火炎放射器の細い棒の先端から、炎が勢いよく吹き出た。
燃料が諸費され、高熱の炎がボォーボォー!とスライムを焼く。
身体を構成する液体がジュージューと蒸発しまくり、痛がっている。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!なんでごうなるのぉぉぉ!!」
「お前が言ったんだろう!
炎で殺されたいってなぁ!」
「……やめでぇぇぇ!!勇者さんっ!
これには深い訳があるんだよ!
実は僕はスラリンのお嫁さんで、そんでスラリンは――」
言い終わる前にスライムの身体は、ネットリとした粘液を維持できなくて、ただの液体になってしまった。
広い草原に薄く広がり――偽スライムは完全に死んだ。
勇者は虚しさを覚える。
本物のスライムの仇は取った。だが、仇を取っても本物が生き返る訳ではない。
青い空を見上げ、悲しい声で呟く。
「……スライム。
天国で見てたか?
お前を殺して成り代わった奴を殺し――」
「死ねぇぇぇ!!」
聞き覚えがある声が後ろからした。
勇者は驚愕して振り返る。
そこにはゆっくりとジャンプしながら迫ってくる青い粘体の生物『スライム』の姿があった。
球形状の体にあるデフォルメされた可愛い顔は、怒りと憎悪に染まっている。
「よくも僕のお嫁さんを殺したなぁぁぁぁ!!
勇者さんにお嫁さんを紹介しようと思っただけなのに……なんでこんな酷い事をするんだぁぁぁ!!」
だが悲しい事かな。
このスライムの足は遅すぎる。ペタンッペタンッとジャンプしながら進む速度は赤ん坊のごとく。
「殺してやるぅぅぅっ!!!
今まで旅に嫌々付き合って来たのに恩を仇で返しやがってぇぇぇ!!
下等な人間風情がぁぁぁ!!」
しかし、勇者への精神的ダメージは絶大だ。
その厳しい言動。敵を見るような目。
今まで築き上げた絆が一気に崩れ去る。
「ス、スライム!俺たちの今までの友情の日々は嘘だったのか!?」
「大魔王様に恩を売るためにぃぃっ!最後の最後で裏切って殺してやるために仲間になっただけだよぉ!
ざまぁぁぁぁ!!勇者っ!裏切られてどんな気分だぁー!
後悔しながら死ねぇぇぇ!!!」
「……今の発言でわかった。
お前も偽物だろ!本物はなぁ!
もっとアホなんだよっ!そんなに俺の心をえぐるっ!高度な心理攻撃ができる訳ないだろがぁー!
偽物は消毒だぁー!」
火炎放射器の棒が、スライムに向けられてスイッチが押された。
超高熱の炎が吹き上がり、スライムを瞬時に焼いて、ただの液体に戻す。
さっきのスライムと比べると超弱かった。耐久力的な意味で。
勇者は青い空を再び見上げ、立ち尽くす。
「……スライム。
仇は取ったぜ」
誰が本物で偽物だったのか?真相は闇の中……いや、新たに遠い所から近づいてくるスライムがもう1体。
プルプルッと震えていて、ニヤケ面のとっても馬鹿そうな顔だ。
「勇者さんっ!一ヶ月間も不在にしてごめんねっ!
家出したんだけどっ!もう野生の環境が嫌になったよ!
他のスライムは僕に意地悪するし、セック●させてくれないんだよ!
もうっ!僕、人間の世界じゃないと生活できないよ!
だから、美味しいご飯を作ってね!焼き鳥でいいよ!」
何故か、このスライムの頭の上に小さなスライムが1体載っていた。
勇者は歩いて近づいて問いただす。
「頭の上にあるのは何だ?」
「僕のおちびちゃんだよ!可愛いでしょ!?
勇者さんに世話をさせてあげるよ!嬉しいよね!
焼き鳥を早く作ってね!グズグズするのは嫌いだよ!
勇者さんは僕の召使いでしょ!さっさとご飯作ってね!」
プルプルっと可愛く震えるスライム。
完全に勇者さんを、金蔓としか思っていない馬鹿発言だった。
一ヶ月の間、野生に返ったせいか、以前よりも発言が超ゲスい事になっている。
「なんで何も言わないの!勇者さ――」
「死ね。お前も偽物だな」
勇者は肉体言語で答えた。
本物のスライムは、思い出の中だけの存在になった。
後編に続く
今回のコメントまとめ+作者感想さん
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【小説家になろう】2015年11月の月間ランキングベスト10は、異世界で最強の力を得て俺TUEEEE! 【聖者無双】【LV999の村人】【駆除人】
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【小説家になろう】 犬塚 惇平の『 異世界食堂』。一巻だけで8万部。しゅごい
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(´・ω・`)二度目の修正はゆっくり後日
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