Lv12「不死王、キャベツ相場に悩む」 【この中に一人っ!ラスボスがいる!】~LV999の白い骨~

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公開日: 2016年8月8日月曜日 この中に一人っ!ラスボスがいる! 自作小説





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この中に一人っ!ラスボスがいる!】~LV999の白い骨~
LV0の不死王!~骨、ほぉね、ボーン!~】 の外伝



八百屋で並ぶ無数のキャベツ。とっても豊かに育った緑色のお野菜さん。
その値段を見て、ワルキュラは心の底から驚愕した。
明らかに……生産者が得る利益よりも、出荷する経費の方が高い。
そんな安すぎるキャベツが、八百屋に大流通している。
農家の皆さんを心配したワルキュラは、衛星電話を異空間から取り出し、本国に連絡を入れた。

「俺だ!ワルキュラだ!
今すぐ、農業関連の大臣を集めろ!
キャベツ農家の皆が大変だ!」

「もっふふ。
キャベツが安くてお得です。
美味しいキャベツさんがたくさんです、もっふふ」

緊急事態を他所に、ワルキュラの目の前で、狐娘がキャベツを買い漁る……。
キャベツ農家が犠牲になっているとも知らずに……。

「このままではキャベツの未来が危ない!」

「もっふぅ?」

~~~~~

一時間後、キャベツ利権に関わるお偉いさんが、帝国の宮殿に集まり、激しい議論を交わしていた。
ワルキュラは、紅い玉座に腰を降ろして座っている。狐娘の姿はない。

「なんて事だ!このままではキャベツ農家が破産してしまう!」

「誰だっ!?この状態になるまで気付かなかったのか!」

「ほ、補助金を出せば良いのでは……?」

「補助金を出しても、キャベツは需要が伸び辛い野菜だ!無意味すぎる!
買い溜めしても腐るのだぞ!?」

熱い議論だったが、問題は解決しそうにない。
ワルキュラにも、これらの問題を解決する策が思い浮かばない。
キャベツは保存が効かない葉物だ。冷蔵庫があっても、一ヶ月そこらで腐敗を始める。
それゆえに、相場が急激に変動しやすいのだ。

(困ったな……。
野菜の値段が安いと理解できても……経済の事がよく分からぬ……。
意見を求められたら、どうすれば良いのだ……?)

経済は生きている。
キャベツの価格を、相場と全く違う価格で売るのは難しい。
相場より安かったら、犯罪組織が買いあさり転売する。
相場より高かったら、闇市が発生して、税金が取れない。
そうなると、ワルキュラがやる事は一つ――

(経済の事はよく分からん、適当にごまかそう。
こんなに専門家がいるのだ。きっと、誰かが良い知恵を出すだろう)

決心したワルキュラは玉座から立ち上がる。
それと同時に、場の熱い議論が終わった。
大臣達は、期待と畏怖を込めた視線を、自らの君主へと向ける。
軽く頷いたワルキュラが、骨の口を開けて――

「……国力とは、物を生産し、物を流す事で得られる。
俺たちは、その流れから税金を取る存在なのだ。
……わかったな?」

そう言って、すぐに玉座へと腰を降ろし、不安になった。
こんな適当な発言で、今回の問題は解決するのだろうか?
キャベツは、値段が下がって需要が増えても、やはり保存が効かないという問題点があるせいで、買い溜めしてくれる客が少ない。

(今の俺の発言は客観的に見たら……意味不明な発言だ。とっても格好悪いシーンなのではなかろうか……?)

骸骨顔なおかげで、恥ずかしくなっても顔に動揺は現れない。
ただ、静かに大臣達がどのような答えを導き出すのか、どっしり構えて待つだけだ。

「私は理解できましたぞ!
ワルキュラ様はっ!この問題をっ!たった一言で解決なされた!」

その発言をしたのはデスキング。キャベツ利権と全く関係がない骸骨だった。ぶっちゃけ、陸軍の最高権力者だ。
ワルキュラを崇拝しすぎて、軍人なのに、この場に何故かいる。

「「ど、どういう事なんだ!?」」
「「ワルキュラ様の先ほどの発言に、どんな意味があったのですか!?」」

大臣たちは、口々に問いかける。
デスキングは恍惚感が溢れすぎて漏れ出しまくりな口調で――

「ワルキュラ様は……恐らく、こう言っておられる。
キャベツを生産し、キャベツを流せと……。
この流せとは……海に、キャベツを流せという事だろう」

「キャ、キャベツを物理的に減らす事で、相場を維持するという訳ですか!?」
「さ、さすがはワルキュラ様だ!我らには想像も及ばぬ思考をなさる!」
「供給が多すぎて値段が異常に安くなるなら!」
「「その分だけ廃棄すれば良いのだ!」」
「「価格調整のために野菜を潰すなんて……誰にも真似できない凄い発想だ!」」

そのみんなの意見に、ワルキュラは戦慄した。
折角、農家が苦労して作ったキャベツを捨てるのは勿体無い。
世界には、キャベツすら食えずに飢える貧民もいるというのに、そんな酷い事はしたくなかった。
だが、ワルキュラが一人孤独に苦しんでいる間にも、大臣達が様々な提案をしてくる。

「キャベツを海に流すと、輸送コストがかかって、キャベツ農家の皆さんが破産するぞ!」
「なら、こういうのはどうだろうか?
キャベツを畑で潰して堆肥にすれば良いのです!」
「その案は実に良い!それで行きましょう!」

罪のないキャベツさん達が、食卓に上る事もなく、畑で潰される事が決定してしまった。
新鮮でシャリシャリッ!サクサクッ!という食感すら出す機会に恵まれず、無残にも畑の土へと帰るのだ。
ワルキュラは猛烈に悲しくなった。
キャベツ農家の生活を守るためとはいえ、彼らの汗と努力の結晶を潰すなんて……酷すぎる。
しかし、帝王の座は孤独である。
時には非情な決断をしなければならない。
産業を守るために、あえて――労働者の努力を踏みにじる必要があるのだ。

(キャベツは安くなっても、そんなに需要が伸びない作物……。
恨むなら、俺を恨め。
消費者は、キャベツが安くなっても、たくさん買ってくれる訳ではないのだ……)

場の議論で、結論が出た事で、ワルキュラは玉座から格好よく立ち上がり、力強く宣言する。

「俺は命令する。
キャベツを潰せ。土に還せ、キャベツのために……キャベツに死をくれてやるのだ」

地平線の彼方すら埋め尽くすキャベツさんが、価格調整のために――畑で死ぬ事が決定した。
……おかげで、キャベツの値段が、適正価格に戻り、世界初の減反(野菜の価格調整)政策として歴史に残る事になる。
ワルキュラは、キャベツ農家の生活を守ったのだ。



狐娘(もっふぅ……キャベツさんを畑で潰して、土にするなんて……。
やっぱりワルキュラ様は大魔王で、庶民の敵だったんだ……!もっふぅ……!)

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3 件のコメント :

  1. (´・ω・`)ゆっくり修正完了

    キャベツ(´・ω・`)懐かしい過去のニュースねたでござる。
    叫んで動き回るキャベツとかにした方が良かったかもしれない。

    返信削除
  2. いやいや普通に保存食にすれば良いじゃんw
    未だ冷蔵庫などが無いしかも生産力がそれほど高くない時代なら
    生産品が捨てられるってほどの供給量まず見込めない気が…
    機械化農業になって一人の農家が数人
    もしくは数十人分以上を生産できるようになったけど
    それ以前の生物を利用した耕作などでは
    まず供給量自体それほど見込めないんじゃ…

    あと海に流す河川が近場にあるなら船での交易がまず先でしょ
    大量輸送できるなら閉塞した中世のような時代なら
    国家間事態それほど行き来して物が流れる状況少なかっただろうし
    それほど距離を稼いで遠国まで足を延ばさなくても
    相場はかなり変動しただろうし
    まずは保存食の製造と交易じゃないかなぁ

    返信削除
  3. この話に、なぜ、続きがあると理解した……!


    ワルキュラと、 発明エルフ③~キャベツ~

    エルフ娘「そういえば、報告するのを忘れていた発明があるのです」

    ワルキュラ「なんだ?」


    エルフ娘「私が改良した特製キャベツなのです~」

    ワルキュラ「……キャベツ?
    ああ、今年のキャベツは、大豊作で大問題になっていたな」


    エルフ娘「ほら、見てください、このキャベツ」

    ワルキュラ「むぅ?」

    キャベツ「ホンギャァァァァァ!ほんぎゃぁぁぁあ!!」

    エルフ娘「害虫を自分で食べて栄養にする機能があるのです!」

    ワルキュラ「こんなものを流通させる気だったのか!?」

    エルフ娘「しかもっ!野生動物に荒らされないのですよ!」

    ワルキュラ「誰が食べるか!こんなクリーチャー!?」

    エルフ娘「え、でも……人間たちは美味しい美味しいって食べてますよ?」

    ワルキュラ「既に流通しているだとっ……!?
    な、何か副作用はあったりするんじゃ……?」

    エルフ娘「あんまり人体実験してないから、分からないのですよー。
    どんな食べ物にも毒はあるのです~」





    ワルキュラ「とんでもない物を見てしまった……
    こういう時は狐娘を見て、癒されよう……」

    キーニャン「もっふふ、今年のキャベツは中々に良い味です。もっふふ」

    ワルキュラ「」

    キーニャン「もっふぅ?」

    ワルキュラ「それを食べる事を禁ずる!」

    キーニャン(きゃ、キャベツを畑で潰したり、食べるのを禁止にしたり、どれだけキャベツが嫌いな大魔王なんですか!?
    ま、まさかっ……!
    キャベツには不思議なパワーがあって、それを独占するためにワルキュラ様は工作しているんじゃっ……?)

    返信削除

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