2話「土の国とヨモギ餅」

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公開日: 2015年11月22日日曜日 (✿╹◡╹)料理大好きエルフの異世界レストラン 管理人の文章

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【(✿╹◡╹)料理大好きエルフの異世界レストラン



ヨモギとは? しゅごい生命力を秘めた驚異の薬草です。荒地でも繁殖してます。

ヨモギとは? よもぎの葉を軒先に飾ると魔除けになります。腰痛や神経痛の薬としても使えます。

ヨモギ餅とは? ヨモギを使った餅の事です、とっても美味しいですよ。お店で1個千ミーニャンで販売してます。



真っ青な空。
朝の冷たい澄んだ空気。
洒落たレストランの前で、幼い愛らしいエルフの少女(約100歳)が花の水やりをしていた。
青いエプロンドレスを着たラッキーだ。長く伸ばした金髪がうっすら輝いている。
水やりなんて、風と水の精霊魔法でチョイチョイのチョイ。
空気中の水分を集めて、植木のお花さんに直接プレゼント。
水道代かからなくて自然とお財布に優しい水やりだ。

「お花さん~お花さん~。
綺麗に綺麗に育ってね~。
花びらは~料理の上に載せる盛り付けさんに~しちゃうよ~」

可愛らしい鼻歌まで歌っている。
だが、残念な事に――場に似合わない銀仮面を被った青年がいた。
店の隣にある空き地。そこに鎮座している1kmサイズの真っ赤な巨大戦艦。
通称、移動空中宮殿ツァーリの主『仮面皇帝ナポ』が、紅いスーツを着て、手にクワを持ち、地面を耕す農作業をやっていた。
一国の頂点に立つ人物がひたすらクワで硬い地面を柔らかく耕している。
さすがのラッキーも気になった。

「あ、あの、お祖父様?家庭菜園ですか?」

仮面皇帝は愛らしい少女の声に、農作業を止める。
クワを地面に突き刺し、支配者としての貫禄がある顔をラッキーに向けた。

「……ラッキー君。
私は農作業がどれほど厳しいものか、知りたくてやっているのだ。
クワでの農業は大変だな」
「いえ、今時の農家は耕作機使ってやってると思いますよ?」

首を傾げたラッキー。仮面皇帝は少女の些細な疑問を解いてやろうと優雅に微笑んで

「……未だにクワで農業をしている国はたくさんあるのだ。
一生懸命働いても、作物を買い叩かれて儲からない。下手したら大赤字。
精神的にも肉体的にも大変辛い仕事。それが農作業だ」
「外国で……何かあったのですか?」
「よく分かったね、ラッキー君。
知りたいかね?」
「国家機密とか、危ない話じゃないのなら……すごく興味があります」

ラッキーの青い目が知的好奇心でキラキラっと輝いた。仮面皇帝も孫娘と接する事で口が軽くなる。

「よろしい話をしよう。
これは私が訪れた国の話だ。
名前をつけるとするならば――」

ツンデレ物語が始まった。



~2話「土の国と帝王ヨモギ餅」~


外交関連の仕事で、仮面皇帝が訪れた浮遊大陸は、ロシア(日本の約45倍)ほどの大きさがあった。
だが、科学も魔法も大して発達しておらず、農作業はクワや牛を使った原始的で非効率なもの。
それゆえに人民のほとんどが農作業に関わり、貧しい暮らしをしている。
首都に近い辺鄙な農村。ボロボロの民家が立ち並ぶ場所から、少し離れた所を、仮面皇帝が護衛の機械歩兵とともに歩いていると――怒り狂った大勢の農民が、細長い木製のクワを次々と地面に叩きつけている姿を見かけた。

「土さんっ!お前のせいだっ!」
「オラの娘は土さんのせいでっ!奴隷商人に売られちまっただ!」
「土さんっ!反省しているだかっ!?反省したら今年は豊作にするべだ!」
「これはオラの娘の分っ!この一撃は嫁の分っ!そしてこれはっ!オラの怒りだぁー!」

クワが地面に打ち付けられる。地面が柔らかくなる。
広大な畑が次々と振り下ろされるクワの餌食となり、農作物が育ちやすい柔らかい土になる。
しかし、農民達の様子が可笑しいから……仮面皇帝は彼らの前まで堂々と歩いて

「君たちは何をやっているのかね?この地域の祭りか?」

 その問いに対し、怒り狂った農民達を代表して、40歳ほどの逞しい村長が前に出てきた。

「ワシらは土に復讐してるだ!」

とても正気とは思えない発言。
地面に攻撃とか、なにそれ?美味しいの?状態になった仮面皇帝は考え込んだ。
村長さんは思わせぶりな素振りをしながら、必死に自分の意見を伝えようとしてくる。

「外国の方に分かるように説明するだっ!
去年っ!土さんがとんでもない事をしただっ!」
「土が?」
「んだっ!作物を不作にするという大罪を犯しただ!
おかげでっ!子供を売ったり、売れない子供を間引いたりして大変だっただ!オラの子供も3人犠牲になっただ!」村長が頷いた。
「……そうか、大変だったな」

少しのやり取りで仮面皇帝にも理解できた。
農業はただでさえ儲からない辛い仕事。不作になれば、食べて生活するために家族を売る必要も出てくる。
国が腐っていたら、なおさらだ。
日本の江戸時代なら、領主が米をプレゼントしてくれるが、この地ではそんな事はないのだろう。

「だから、ワシらは土に復讐しているだ!」

そう言って、村長がクワで地面を豪快に叩く。耕された土が柔らかくなる。

「土さんはこうやって叩かれるとっ!ワシらの言う事を聞いてくれるだっ!
土さんっ!今年は絶対に豊作にするだ!そうしないともっと酷い事するだっ!」
「「んだっ!んだっ!土さんっ!豊作を約束するだっ!」」

農民達は叩く。地面を容赦なく何度も何度もクワで叩く。
地面は何も言わない。ただ柔らかくなるだけだ。作物が育ち易いように。
クワで叩く度に、農民達の嗜虐心は満足させられ、圧倒的弱者である『土さん』を虐め見下してプライドを満足させた。

「土さん反省したべ!?」
「反省したら豊作を約束するだっ!」
「これからはずっとオラのターンだっ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラァー!」

農民達がクワで地面を叩いて叩きまくる。土はその度に柔らかくなった。 
そんな事をしている内に……森の方から、牛車がやってくる。
荷物は灰を満載した桶が4つ。
御者は農民達の前まで牛車を進ませて、下品で邪悪な笑みを浮かべた。

「皆っー!土さんの親戚を運んできただ!
ちゃんと焼き殺してきただよぉー!」

その叫びを聞いた農民達は、喜んで次々と桶を下ろし、地面に灰をばら蒔く。
ばら蒔く、ばら蒔く、地面が灰で真っ白になった。

「地面さんっ!親戚の樹木さんの遺体をばらまかれて辛いべっ!」
「オラ達は残酷にもっ!身動きができない樹木さん達を焼き払ってきただっ!
この灰はその遺体だっ!オラ達の怒りと苦しみが理解できたべ!?」
「オラ達に恐怖すんべっ!豊作にしないと来年も同じ事をするだ!」
「そうしないとっ!次はもっとたくさん殺すだっ!焼き殺された樹木さんの辛さが分かるっぺ!?」

仮面皇帝は黙って、これらの光景を見て、とっても肥料になる良い行いだなと思った。
木を燃やした灰は弱アルカリ性の補助肥料になる。
使用量に注意すれば土は肥え、作物は豊かに実るはずだ。
呑気に復讐という名前の農作業を見ていると……村長さんは怖い笑顔で仮面皇帝に近づき、警告してきた。

「外国のお客さん方っ!
あんたらには、とっても残酷で非道な行為に見えるかもしれんだっ!
でもっ!ワシラの怒りは海よりも深いっ!土さんへ報復しないと怒りが収まらないだ!」
「え?今までの行為に……何か問題があるのかね?」 仮面皇帝は首を傾げた。
「ワシらの残忍さにやせ我慢してるだなっ!?
ワシ達はこれからもっともっと酷いことをやるだ!
作物の種を植えて……その後に発酵させた排泄物をばら蒔くだっ!
恐ろしいだかっ!?ウン●をばら蒔くオラ達の頭が可笑しいと思うだかっ?
でもこれがワシらの流儀だ!
お客さんは黙って見てほしいだっ!」

発酵した排泄物は良質な肥料だ。
土を肥やす良い行いだ。 
つまり、どうして去年が不作になったのか?その原因を仮面皇帝は『農民の言動の数々』で理解し、村長に静かに問いかける。

「村長。
去年は土に報復しなかったのかね?」
「当たり前だっ!
二年前は豊作だっただ!
豊作の後に、土さんに報復する理由はないだっ!
むしろ感謝して優しく接するだっ!」
「毎年、土さんを徹底的に虐めると、良い感じに作物が取れると思うのだが……騙されたと思って実践してみてはどうかね?」

すると村長さんは、仮面皇帝を、鬼を見るような恐ろしい目で

「ひ、非道すぎるだっ!?
土さんが反省して頑張った後に……排泄物ぶつけたりするのは駄目だっ!
ワシらは残忍じゃけどっ!意味もなく報復はしないだっ!
帰れっ!帰れっ!土さんを徹底的に虐めるなんて酷いだっ!
この帝王ヨモギをやるから帰れ!
土さんに謝るだっ!」
「灰をばら撒くのも、発酵した排泄物をばら蒔くのも、どっちも土さんが喜ぶ行いだ。
騙されたと思ってやってみたまえ。
毎年、土さんをそうやって苛めれば状況は改善するはずだ」

仮面食皇帝の話を聞いた農民達からもたくさんの声がっ!

「土さんを毎年虐める!?土さんが自殺してしまうだっ!」
「そうなったらオラ達はどうやって家族を養えばいいべ!?」
「異教徒は出て行くだっ!」
「悪魔みたいな発想だっ!オラ、恐怖しただっ!」
「異教徒を灰にするべ!殺せっ!殺せっ!」

たくさんっ!木製のクワが飛んできた。殺す気で農民達が襲いかかってくる。
護衛の機械歩兵達が農民達の手足をビーム砲で打ち抜く。
3秒もする頃には、殺しに来た農民は全員が手足を打ち抜かれて動かなくなった。
多文化コミュニケーションが難しいよう
ナポの常識はこの地では非常識。全く通用しなかった。

「認めたくないものだな……この世界が話し合いで解決できない事だらけな事を……」 




★終わりがよろしいようで★


「……というような事があってね、ラッキー君。
私は彼らがどうして、あそこまで土を憎悪し、報復と称して肥料を上げているのか理解できなかったのだよ」 

今まで話を黙って聞いていたラッキーは、エルフ耳をピョコッピョコッ!と元気よく動かした後に、首を可愛くかしげた。

「えと、お祖父様の家庭菜園と、話の農民達って関係あるんですか?」
「うむ、彼らの辛い気持ちを少しでも理解したくてね。
こうやってクワで地面を耕しているんだ。
私はこれでも超大国の皇帝。他国の民の気持ちも知っておく必要があるのだよ」

仮面皇帝は何処までも優しかった。ラッキーに向けられる視線にも慈愛が込められている。
こんな素敵な人が皇帝なんだなと思うと……少女の心はポカポカして暖かくなった。

「さすがお祖父様です!
私、尊敬しちゃいます!
お祖父様が統治してから1200年間、皆、飢えずに生活できてますし!」
「う、うむ、そんなに褒められると照れるな。
あ、そうだ」

調子を狂わされた仮面皇帝は、指を軽やかにパチンッと鳴らした。
召喚魔法が発動して緑色の草が出てくる。
話に出ていた『帝王ヨモギ』だ。
仮面皇帝は『帝王ヨミギ』の束を掴み、ラッキーの手に置いた。

「……これ?ヨモギですか?」
「我が国では、高級食材として高値で取引されている帝王ヨモギだ。
万能薬とも言われるほどに栄養素が豊富で、飲んで良し、付けて良し、浸かって良し、嗅いで良し、燃やして良しの五拍子揃っている。
健康食材としても人気がある」
「私に下さるのですか?」

ラッキーの青い目が未知の食材への好奇心でキラキラ輝いた。
純真な少女に見つめられた仮面皇帝は余計に照れくさくなって

「ヨモギは……お餅に入れると美味しいらしいぞ、ラッキー君。
我が国でも栽培するのも良いかもしれないな。
こうやって土に触れていると……地面に愛しさを覚える。
なぜ、あの農民達が土を憎んでいたのか、未だに理解できない……。
どうやったら、あそこまで土に対してナチュラルなツンデレになれるのか謎だ……」

皇帝の顔はとっても悲しそうな、嬉しそうな、複雑な表情だった。
銀仮面で顔が半分隠れているせいで、ラッキーにもよく理解できなかったが

(よぉーし!美味しいお餅作っちゃうぞー!)

美味しい料理で、人が笑顔になれる事を知っていた。




★ラッキー「名づけて帝王ヨモギ餅!」★

数日後、農作業をしている仮面皇帝の元に、笑顔のラッキーが歩いてやってきた。
少女の手には美味しそうなヨモギ餅が山のように載った皿とお茶がある。

「お祖父様!
この前のヨモギを水洗いして、すり潰して餅にしてみました!
試食してくれますか?」
「ほぅ?
見せてもらおうか、ラッキー君の料理の腕前とやらを」

仮面皇帝はゆっくりと、緑色のヨモギ餅を手に取り、パクンッとひと齧りした。
――モチモチっとしか柔らかい食感。すり潰されたヨモギと餅の味がミックスされて美味い。
更に一口齧る。ほどよい甘さのコシ餡と餅が奏でる絶妙なハーモニーに涙すら流したい気分になる。
諸君、私は餅が大好きだ。帝王ヨモギで餅に高級感を与え、素晴らしい隠し味になっている。
諸君、まるで赤ちゃんの頬っぺたのように柔らかい。そんな餅だ。
諸君、私は料理が上手い孫娘を持てて幸せだ。
ふぅ、一息ついた私はお茶を飲む。お餅に合う抹茶だ。渋い苦さと甘さが食後の満足感を高めた。
更に一口。モチを齧ると――

「農作業だワッショイ!」「農作業だワッショイ!」「農作業だワッショイ!」

巫女服を着た、二頭身の愛らしい狐娘達が……クワを使って畑を耕していた。
先ほどまで宮殿の隣にいたはずなのに、私の周りは地平線の彼方まで広がる畑になっている。
狐娘達は楽しそうに地面を柔らかくして、頑張っていた。その健気な働きっぷりが心にくる。
孫娘の料理は、たまに食べるとこんな事になるのだ。
更に一口、ヨモギ餅を齧る。
口に自然の甘味が広がると同時に――畑にヨモギの若い葉がたくさんモコモコッと生えてきた。
狐娘達は「もっふふー」「もっふふー」と楽しそうに言いながら、ヨモギの葉を摘み取り、竹籠に入れていく。
これは全て幻覚だ。そう分かっていても私の心は――

「私の荒んだ心が癒されるようだ……ありがとう、ラッキー君。
君の料理は世界一だ」 

畑の中で、純白の白いワンピース、麦わら帽子を被った孫娘《ラッキー》が太陽のような満面の笑みを浮かべて

「大好きなお祖父様に料理を美味しく食べてもらえる。
それだけで私は幸せ一杯ですよ!」







その日の午後、ラッキーの店に師匠が訪れた。

「お師匠様。今日は帝王ヨモギ餅ですよ~」
「へぇ、珍しいなラッキーちゃん。どこで手に入れたんだ?」
「私の庭で1年くらい前から栽培してます。高級食材なだけあって育てるの大変でした」

仮面皇帝からプレゼントされた『帝王ヨモギ』は、そこらへんによく生えている普通のヨモギだったから、本物の帝王ヨモギの肥料にされた。






2話「土の国とヨモギ餅」
おしまい





今回のコメントまとめ+作者感想
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Erufu_no_isekai_syokudokuraku/c2.html 

【小説家になろう】メイドは進むよどこまでも!、一巻で打ち切り
http://suliruku.blogspot.jp/2015/11/blog-post_6.html


【小説家になろう】 高見 梁川先生の『異世界転生騒動記』 評判が良い件
http://suliruku.blogspot.jp/2015/11/blog-post_25.html




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過去編(モチ対決)

殺人料理人モチダンーゴ( ^ω^)モチ?
あれは人の喉に詰まらせて殺す料理さっ……!くくくっ……!

ラッキー(´・ω・`)許せないっ!
年配の事を考えない料理なんて……料理じゃありませんっ!
はいっ!喉に詰まらない美味しいモチこそ至高っ!

殺人料理人モチダンーゴ( ^ω^)うわ、ようじょしゅごい。
俺をアンタの弟子にしてください!



審査員(´;ω;`)(´;ω;`)あ、あの……私たちにモチを食べさせる前に決着つけないでくれます?
客を楽しませる前に帰るなんて……酷すぎる!
前にゆっくり戻るよ! ゆっくり次に進むよ!
【(✿╹◡╹)料理大好きエルフの異世界レストラン

1 件のコメント :

  1. (´・ω・`)二度目の修正はゆっくり後日

    ラッキー(´・ω・`)モチモチにしてやんよ~

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(´・ω・`)1日に1回、システムからスパムだと判断されて隔離処置されたコメントを、元の場所に戻しておるんじゃよ。

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マザーテレサ(ノ●ω●) 人間にとってもっとも悲しむべきことは、病気でも貧乏でもない。 自分はこの世に不要な人間なのだと思い込むことだ。