5話 祖国戦争 序戦 -1 「お前は既に包囲されている」 【LV0の不死王!
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公開日: 2016年2月29日月曜日 LV0の不死王 自作小説
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セイルン王という名前のオジサンが宮殿にいる。
つい先ほどまでは、自信溢れる無能独裁者という迷惑すぎる存在だったが……これから『元』王様になるのか、王様家業を続行できるかは彼の上司次第。
無職にクラスチェンジしなかったのは、いくつか理由がある。
まず、既存の統治機構ぶっ壊して新しく構築するのは、とっても面倒臭い。
だから、ワルキュラは自身の地位を皇帝にして、セイルンを王(かしん)として存続させてジワジワ乗っ取る事にした。
今、ワルキュラは紅いふかふかの玉座に座り、小さくて可愛いルビーと仲良く談笑している。
「僕、頑張って後継ぎを産めるように頑張ります!」無邪気すぎる銀髪の少女。
「あ、ああ?」戸惑いながらワルキュラは返答した「頑張れ……?」
彼は内心で
(え?骸骨な俺と子作りしたい?ルビーちゃんはそんなに変態だったか?)
首を傾げた。
「はいっ!僕、サッカーチームができるくらい、たくさん子供を産みます!」
「う、うむ、夢が大きい事は良い事だっ……?」
「夜伽は何時でも大歓迎です!」
ワルキュラ達の常識が完全崩壊した会話の数々。
玉座の隣にある青い椅子に座っているセイルンは、これを聴いて頭が発狂しそうだった。
(あわわわわわわっ……!
骸骨がっ……銀髪の美少女と子作りっ……する!?
ワ、ワシの世界がこ、壊れるっ……!?)
セイルンの頭が本当にどうにかなりそうだ。
『骸骨にチン●ねぇよ!』とツッコミたいが、ひょっとしたらワルキュラの黒いローブの中に『骨のチン●』でもあるのかもしれない。
それを想像するだけで、おぞましさを余計に感じ、この場から今すぐ逃げ出したい。
(いや、骨のチン●は刺さるだろっ……?ワシの常識的に考えてっ……?
ま、まさか……骨を突き刺す事を前提にした繁殖っ!?
骨を突き刺して繁殖するのかっ……!?
あわわわわわっ……!やっぱり邪神だっ……!)
正直、セイルンは生きた心地が全くしなかった。
国家の財政は丸ごとワルキュラに奪われ、もう美女を集めたハーレム生活や、贅沢三昧うはうはライフは出来なくなった。
無数にいる王子・王女達を養う事も難しい。
セイルン王の血筋という価値が激減した。そんな状況で、わざわざ大枚はたいて王族を養う奴らは少数派だろう。
だが、そうなると贅沢に慣れた王子達は――路頭に迷って死ぬ事になる。そうセイルンには他人事のように理解できた。
(いや、息子達は息子達で何とかするだろっ……。今はワシの保身を優先せねばっ……!)
そんな時だ。
ワルキュラが渋い声色で話しかけてきたのは
「おい、セイルン」
その瞬間、セイルンは椅子から力強くハイ・ジャンプ。
空中でクルリッと一回転。着地と同時に顔面を床に打ち付けるジャパニーズ土下座を格好悪く決めて、ワルキュラに返答した。
「は、はいぃぃぃぃ!何でしょうかっ!?ワルキュラ様!」
(りゅ、流行しているのか……?ジャパニーズ土下座っ……!?)いきなりの展開に言葉が詰まったワルキュラ。
異世界の風習という事で強引に納得して、言葉を続ける。
「レベル上げがしたいのだが、この近くで殺しても良い生物が大量にいる場所はないか?」
ワルキュラからしたら、Lv0という致命的すぎる状況を改善したい。だから他者を殺してレベルアップしよう。そういう思いから発せられた言葉。
だが、セイルンから見れば――この発言が意味する事は『邪神の邪悪なる行動の現れ、THE大量虐殺』だと理解できちゃう。
……命を奪う事すら邪神には遊びの一貫に過ぎないと。
「ひ、ひやぁぁぁぁぁぁ!!!お、おやめくださいぃぃぃぃっ!!国民(セイルン人)を虐殺するのはおやめくださぃぃぃぃっ!
奴隷を代わりに差し上げますからっ!虐殺するならそいつらでお願いしますぅぅぅぅ!!」
(いちいち、反応が大げさな奴だ。きっと日頃の王様業務とやらで疲れて、精神が参ってるのだろう)
そう考えたらワルキュラは、目の前の土下座の達人が哀れに思えた。
だが、先ほどの言葉に引っかかりがあったので
「ん?おい、奴隷なら殺しても良いのか?」
「い、異世界の日本という場所から、幾らでも拉致できる無尽蔵な資源です!はぃぃぃぃ!!
だから、一万人でも十万人でも好きなだけ殺してくださいぃぃ!!」
(なにこれ怖い)
「わ、若い人間を殺したいならっ!ちゅ、中国人はどうでしょうか!?
比較的、若い人間が召喚される確率が高いですぅぅぅ!!
一度に召喚される人数も多いからっ!そろそろ中国人を大量召喚して奴隷にしようと思ってましたぁぁぁ!!
この国の主要産業なんですぅぅぅ!!!
だからっ!奴隷を代わりに差し上げますからっ!国民だけはお助けくださいぃぃぃぃ!!」
(怖ぇぇぇぇぇぇ!!!!この人間の王っ!怖ぇぇぇぇ!!!)
ワルキュラはびびった。この国のあり方に。
確かにワルキュラだって人間を殺した事はある。だが、それは自分が生き残るための正当防衛のようなもの。
この国みたいに積極的に拉致して、それを基幹産業の一つにしちゃうレベルの事はやっていない。
だから恐怖した。人間の王に。目の前でジャパニーズ土下座するセイルン王は『正真正銘の大悪党』だと。
北朝鮮の金正日(主人公補正がない内政オリ主。新政策を次々と失敗させまくって300万人を餓死させた)
そんな悪党に違いない。そう断じた
(でも、俺にだって慈悲はある。改心するなら許してやろう……)
「……日本人も中国人も召喚するのをやめろ。
二度と奴隷にするな。良いな?」
「はぃぃぃぃぃぃ!!分かりましたぁぁぁっ!!!」床に何度も頭を打ち付けて、血を流しながら承諾しまくるセイルン。
(おお、話せば分かる人間だ。珍しい。
きっと、他国から拉致して奴隷にする事を、犯罪だと思わなかったのだろう。改心の余地があるな。うん)
そう思ったワルキュラは、土下座しまくるセイルンに、先ほどの要望を丁寧にして語りかける。
「ところでダンジョンとかはないのか?(レベル上げしたい)」
「ダ、ダンジョン?」初めて聞く単語に、セイルン王は戸惑う。
「無数の魔物が彷徨っていたり、トラップがあったりする場所だ。
巨大洞窟や地下遺跡とかでも良いぞ?ああいう場所には色んな生物がいるはずだ」
「ち、地下遺跡!?」
セイルン王は嫌な予感がした。
地下遺跡。それは目の前のワルキュラと同じ気配の存在がプンプン漂う場所。そんな化物が二つも存在して巡り合うなんて事があったら――
(王国、いや、世界がワシの代で……滅ぶ?)
そうセイルンは本能的に理解する。ワルキュラ1人ですら対処できないのだ。
それが倍に増えたら厄介事は倍を通り越して無限大である。現実の1+1の結果は2ではないのだ。
だからセイルンは言い訳してごまかす事にした。
「ずいませんっっっ!
地下遺跡は以前、一週間前に召喚した自衛隊と名乗る奴隷どもが占拠して以来っ!封鎖しております!
そ、そうだ!王都の外をご覧ください!
殺しても良い人間が十万人以上おります!」
(俺、人間を殺せないから、わざわざ魔物とか求めているのに……本末転倒だろ!?
なんでこんな会話になる!?)
ワルキュラはげんなりしながら『殺しても良い人間』という単語が気になった。セイルン王の案内で王都の高い塔まで歩く事にした。
その後ろをルビーと親衛隊の吸血鬼達が嬉しそうに付いていく。
宮殿の外は夕方。でも、太陽光が大活躍している日時。吸血鬼達はステータスが低下して、体がダルかった。
(ワルキュラ様の前で情けない姿を見せる訳にはいかないっ……)
(太陽めっ……!ワルキュラ様の傘下に下った癖にっ……!なぜ私たちを攻撃するんだっ……!)
(やはり太陽は所詮、太陽という事かっ……!)
(血を飲みたい)
(ルビー様の美味しい血をゴックンゴックンしたい)
うわぁ……太陽は今日も、アンデッドの皆さんに厳しい。
王都の物見塔。火事や戦争などの有事に使う事を前提にした高さ50mの塔である。
細長い建物の中を螺旋階段がグルリっと広がっており、そこをワルキュラとルビーは時間をかけて登りきった。
「さぁさぁっ!ワルキュラ様っ!
こいつらをどうか殺してくだされ!魂を食べても良いですぞ!」
満面の笑みのセイルン王。その彼の手が指し示す先を、ワルキュラは見た。
(この国は既に詰んでいた!)
王都を半包囲する形で、14万人を越す人間の大軍勢がそこにいた。
西の砂漠に布陣している。黒い人の山が点々と砂漠の模様のように見えて壮観だった。
これを見るだけでワルキュラには理解できる。
この軍勢を砂漠に維持できる時点で、相手の国力やべぇぇぇぇ!と。
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(´・ω・`)二度目の修正ゆっくり完了
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